ツバメの観察日記BACK NUMBER
戦力外通告で引退・ヤクルト上田剛史が語る、ポスト青木の重圧、続く故障…「僕のことを忘れないで」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byJIJI PRESS
posted2020/12/31 17:05
上田剛史(左)は戦力外通告を受け、引退の道を選んだ。ヤクルト一筋、14年のプロ野球人生を語った
「#上田剛史の戦力外に抗議します」
今季、ネット上には「上田新喜劇」というフレーズが躍った。チームメイトがホームランを放ち、自軍ベンチに戻ってきた姿をテレビカメラが追いかける。仲間たちからの祝福を受ける姿を映していると、そこに登場するのはカメラ目線で無表情な上田。球場観戦が許されず、ファンはテレビ観戦しかできない状況下で、「上田新喜劇」は各球団が模倣する隠れたブームになった。
「ファンサービスはいつも心がけていました。自分が何かを発信することで、それを喜んでくれる人がいることに、すごく満足感を覚えていました。今回、戦力外通告を受けたとき、現役引退を決めたとき、ファンの人からたくさんのメッセージをいただきました。ハッキリ言って、自分の成績に見合わない惜しまれ方でした。こんなことを言うとアレですけど、引退して初めてファンのありがたみをきちんと感じました。ツイッターでの一件も驚きました。本当にありがたかったです」
彼の言う「ツイッターでの一件」とは、上田が戦力外通告を受けた直後から、ツイッター上で自然発生的に「#上田剛史の戦力外に抗議します」というハッシュタグが登場した一件を指している。
「SNSでのファンの人からのメッセージには勇気をもらいました。こんなにも自分のことを応援してくれている人がいたことに今さらながら気がつきました。僕のやってきたことは間違いじゃなかった。そんな気持ちになりました。今さら遅いかもしれないけど、応援してくれたファンの人たちには絶対に恩返しをしなくちゃいけない。そんな思いが強くなりました」
「ずっと僕のことを忘れないでいてほしい」
先日、自身がプロデュースするアパレルブランドの詳細が発表された。同時に彼は今、「学生野球資格回復」取得を見据えている。当然、アマチュア野球の指導者として活動していくためだ。
「元々、服が大好きでした。“いつか、アパレルの仕事をしてみたいな”と思っていたところに協力者が現れたのでチャレンジしました。でも、僕にとって野球は絶対に断ち切れないもの。だから、今はYouTubeで野球について発信することもしています。同時に、今後は資格回復制度によって、アマチュア野球の指導者を目指します。まだまだ先のことだけど、その先にはもう一度指導者として、スワローズのユニフォームを着たい。そんな思いもあるんです。だから、僕のことを忘れないでいてほしいんです(笑)」