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ユーべ10連覇を目指すピルロ監督 戦友ガットゥーゾ、インザーギは“苦労知らずの天才包囲網”結成
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/12/27 17:01
ピッチの司令官だったピルロ。ユーべを10連覇に導き、名将への階段を登れるか
今季の開幕前、ピルロのキャリア不足を案じたユーベのフロントが助っ人副監督として、アレッサンドロ・ネスタの入閣を画策しているという報道がなされた。
ネスタは5年前に北米マイアミFCで監督業に転じ、2018年にイタリアへ帰国すると2部セリエBで地道に指導経験を重ねた。昨季はフロジノーネを率いて、セリエA昇格プレーオフ決勝まで勝ち上がった。
ピルロより3歳上のネスタは、ガットゥーゾ同様ミランやアッズーリで同じ釜のパスタを食った盟友で、彼の入閣が実現していれば新人監督ピルロはさぞ心強かっただろう。
しかし、ユーベ入りの可能性を問われたネスタは即座に「まさか。冗談じゃない、今は私も1人の監督だ」と一蹴。プロの指導者としての矜持を示した。
ピッポも今や“ピルロ包囲網”の1人
ミラン時代のもう1人の戦友インザーギも、今や“ピルロ包囲網”を形成する1人だ。
「あいつはサッカー馬鹿。ビョーキだよ」(ピルロ)
「おまえが監督やるなんて一体誰の差し金だよ!」(インザーギ)
監督同士として初対戦した11月下旬の9節ベネベント対ユベントス戦で、2人は試合前こそジョークを交わしたがゲームが始まれば一転、インザーギは情けを捨てた。ピルロは格下と侮り、ロナウドを休養させた。
スコアは1-1の痛み分けに終わったものの、先制されながら追いついた戦いぶりや彼我の戦力差を考えれば、采配はインザーギの判定勝ちといってもよかった。
「何度かあったカウンターのチャンスをモノにできていたら、うちが勝っていた。ユーベ相手に出した結果にまぐれはない。自分たちの力を見せられた」
愛する古巣ミランで挫折して、3部から這い上がってきたインザーギは、“戦友だからこそグラウンドで倒してやる”と言外に強く訴えた。
最後に責任を取らされるのは監督だからこそ
同じように、ガットゥーゾもネスタもピルロに一歩も譲るつもりはない。
彼らにはそれぞれ立場がある。どれほどプライベートで親しい友人であっても、ナポリの監督がユベントスの指揮官に「頑張ってほしい」なんて公に発言したら大問題だ。
だからこそ、一足先に監督キャリアを始めた彼らは「結局最後に責任をとらされるのは監督。だから思うように、好きなようにやったほうがいい」と、名指しはせずに、静かなエールを送るのだ。