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由規インタビュー 2度目の戦力外通告、トライアウトでも声はかからず…でも「まだまだ投げられる」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/23 11:02
12月7日のトライアウトに参加した由規。NPB球団からの連絡はなかったが、まだ野球を続けることを諦めないと力強く語った
新庄剛志のハツラツさ、神宮のマウンド
――そんな思いを胸にトライアウトに臨んだのですね。
そうですね。それに、実際にトライアウトに出場させてもらって、さらにやる気というか、まだ野球をしたいという気持ちが強くなりました。投げる直前まで緊張していましたが、参加しているメンバーを見ていても、悲壮感みたいなのは感じなかったですし。
――悲壮感がない?
当然、みんな必死だったと思います。それでも周囲の方々が良い雰囲気を作ってくださった。そこにはやっぱり新庄(剛志)さんの力もあったと思うんですけど。これで観客が入ってたらもっと雰囲気が違ったのかなという気持ちはありますね。
――マウンドで心躍る気持ちがあったんですね。
自分もそうですが、新庄さんの一挙手一投足にみんなが魅了されたというか、何かその雰囲気に乗せられた感じはあったと思うんですよね。結果は結果で大事なんですが、それ以上にウキウキしながらマウンドに上がれたという思いはありました。
それに自分にとっては、会場が神宮球場だったこともプラスでした。試合前に受けていただいたブルペンキャッチャーも、同期入団の小山田(貴雄)さん。何も考えず、納得いく球を投げられたかなと思っています。
――結果は打者3人に対して、ホームラン・死球・三振。悪いところも良いところもありました。
結果は結果なので仕方ない。でも手応えは感じました。球速は148キロぐらいでしたが、まだまだ出るという感覚もあって。
――まだまだ出る?
シーズン中も152、3キロぐらい出ていたので。それに、もっとこうしたい、ああしたいとまだまだ試行錯誤できるんじゃないかなと。変化球もそうですけど、ピッチングスタイル自体ももっと良くなるイメージを自分の中で持つことができました。
こんなに携帯を握りしめてることなんて
――終わった後は連絡を待つことになります。どんな気持ちで過ごしていましたか?
トライアウトが終わった直後はホッとしたこともあってホテルですぐ寝てしまいました。でもそのあとからはずっとソワソワしていましたね。こんなに携帯を握りしめてることなんて今までなかったですから。どういう形で連絡が来るのか、全然わからない。だから知らない番号から着信があって「あれっ?」と思って出てみたら、全然違う人だった、みたいなことはトライアウトあるあるです(笑)。
――なかなか味わえない緊張感ですよね。
あとは「○○を獲得!」などのニュースはチェックしていました。FAの去就も、助っ人外国人選手の残留動向なども。チーム編成に関わってくることなので、いろいろ気になって見ていましたね。
――最終的に(12月15日時点)連絡はなかった。
今回はなかったです。1週間という猶予はありましたが、例年からすると、だいたい3〜4日ぐらいで声がかかるだろうという話は聞いていました。落ち込んでいても仕方ないので、そこからまた練習を再開したんですけど、やっぱりトライアウトを受ける前とは違って、気持ちが100%練習に向けないという思いも正直あります。