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「パリーグは怖い。最下位オリックスだって…」楽天ドラ1左腕・早川隆久が明かす“早大の先輩のアドバイス”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph bySankei Shimbun(球団提供)
posted2020/12/15 17:03
11月24日に楽天と入団合意した早大の早川隆久投手
「パ・リーグは怖い。最下位だったオリックスだって、パンチ力のあるバッターが揃っているから嫌。(5位の)日ハムにしたって、1、2番の足が速いのは当然だけど、クリーンアップの大田泰示さんも速いし、リーチも長いからアウトコースでも長打が打てる。とにかくパ・リーグは、どのチームもみんなしっかりバットを振ってくるから気が抜けない」
そう小島はアドバイスを送ったという。その小島が7勝を挙げられた背景に、ストレートで攻め切れたことが挙げられる。早川のように150キロを超えるストレートこそないが、臆することなくキレのあるボールを打者の懐へ投げ続けた。
同じ左腕である先人の経験則は、ルーキーにとって鮮明な指針となる。
早川が言う。
「小島さん、インコースにバンバン押すようになってから勝てるようになりましたもんね。真っすぐでしっかり攻められないと、パ・リーグで抑えるのは厳しいんでしょうね」
ダルビッシュ「いやいや笑 左で155km/hって笑」
最速155キロ。シカゴ・カブスのダルビッシュ有が<いやいや笑 左で155km/hって笑 体感も速そう>と、ツイッターで呟いたことが話題となったように、早川のストレートにはロマンがある。
最大級の持ち味があるに越したことはない。しかし、球速だけが独り歩きし、早川という投手の本質が見落とされやしないだろうか。
早川の魅力とは、そのストレートを内角、外角にしっかりと投げ切れること。そして、スライダーとカーブ、2種類のチェンジアップに、昨年から主要球種となったカットボールと、変化球を織り交ぜ、相手打者に的を絞らせない巧みな投球術にある。
早川は自身の考えをこう述べる。
「自分は球速に注目されがちですけど、そこにこだわりがないというか。真っすぐに関して言えば、ボールのキレを生かせるようなピッチングをしたい。スピードが速くても空振りやファウルが奪えなきゃ意味がないんで」
「え!? いないっすか?」 早川が狙う“楽天史上初の記録”
10月のドラフト、11月まで続いた東京六大学の秋季リーグ戦が終わり、束の間のオフを経て、年明け早々からは新人合同自主トレが始まる。そして、2月には春季キャンプが待っている。それほど時間はない。急ぎ足のスケジュールにおいても、早川はジレンマに陥ることなく、冷静に足元を見つめながら着々と準備を始める。
11月から12月上旬にかけては、リーグ戦の疲れを癒すことに努めた。そして今、早川が重点的に行うのが、ストレートの精度の確認、それを高める作業だ。
40から50メートルの中距離での遠投で、強くスピンのかかったボールを意識する。もちろん、覚醒の大きな契機となった投球メカニズムとの対話も繰り返す。年末にかけては継続するランニングなどフィジカル面の強度も上げる。そうすれば、万全な状態で合同自主トレに臨めると、算段を立てている。