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凄い勝負根性! 大激戦の阪神JFでソダシ白毛馬初のGI勝利 武豊は“31年前の伝説”再現ならず
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2020/12/14 11:35
阪神ジュベナイルフィリーズで白毛馬初のGI制覇を成し遂げたソダシ
一度は前を走るエイシンヒテンの外に行こうとしたが、内に切り替えてゴーサインを出した。しかし、もともとエンジンがかかるのに時間がかかるタイプで、「最後は馬場が悪かったせいか、思ったより弾けてくれませんでした」と吉田が言ったように、ジリジリとしか伸びなかった。
武豊、ルメール、デムーロが次々伸びてきて…
明らかに、外のメイケイエールの脚色がまさっている。「ユタカ・マジック」でメイケイエールが内の馬をまとめて差し切り、31年前の伝説が再現されるかに思われた。
が、ラスト200m付近から、ソダシが二の脚を使って盛り返す。
ソダシの内からクリストフ・ルメールのサトノレイナスが猛然と追い上げてきた。
メイケイエールの伸び脚がやや鈍ったと思ったら、その外からミルコ・デムーロのユーバーレーベンが豪快に伸びてきた。
普通、このように内と外から一気に来られたら呑み込まれてしまうものだが、ソダシは簡単には失速しない。2歳牝馬とは思えない勝負根性でストライドを伸ばす。
ゴール前で内のサトノレイナスが一度はソダシの前に出た。しかし、ソダシは全身を大きく使って差し返し、最後の1完歩でハナ差だけ前に出てフィニッシュ。先頭で歴史的ゴールを駆け抜けた。
2着はサトノレイナス、3着はユーバーレーベン。メイケイエールは4着だった。
勝ちタイムは1分33秒1。
ソダシは、デビューから4戦4勝という圧倒的な強さで、2歳女王の座についた。
「ぼくがこの馬を負けさせてはいけない」
白毛馬での勝利は自身の最多記録を更新する7勝目、GI勝利は2015年の有馬記念(ゴールドアクター)以来の2勝目となった吉田はこう振り返る。
「1番人気で迎えるGIでしたし、ぼくがこの馬を負けさせてはいけないというプレッシャーがありました。返し馬のときからゲートに寄りつかない素振りを見せたので、ぼくのほうもオドオドするところがありました。何とかゲートを出て、レースをこなすことができてよかったです。両サイドの有力馬も見えていたので、何とかしのいでくれと思って必死に追いました。馬に助けられました。感謝です。来年のクラシックに向けて、人馬の信頼関係を築いていきたいです」
必死だったと言うが、直線ではただガムシャラに追うのではなく、少しでも馬場のいい外に持ち出しながら追い、ライバルたちを競り落とした。