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「15歳にして計344ゴール」で年齢詐称疑惑も ドルトムント16歳ムココ、寮住まいでも潜在能力は特大
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/12/11 17:20
16歳ながら強豪ドルトムントで積極起用されるムココ。数年後、どんな成長曲線を描いているだろうか
そして2年後にはドルトムントへ移籍。ゴールへの嗅覚が極めて優れ、スピードがあり、技術レベルが高く、プレーインテリジェンスがある。育成年代で対戦する相手はどこもムココ対策を講じようとするが、必死の守りをいとも簡単に突破してしまう。
記録にはその脅威が如実に現れている。ザンクトパウリ時代には非公式ながら120試合で183ゴールをマーク。常に2、3つ上の学年のチームでプレーし、ドルトムントではオフィシャルに記録されているU-17とU-19で合計73試合に出場し127得点。昨シーズンは15歳ながらU-19ブンデスリーガでプレーし、20試合で34得点を決めているのだ。あまりの存在感に年齢詐称疑惑が何度も起きたほどだ。
もはやプロになれるかどうかではなく、いつプロでプレーするかが焦点だった。
もうナイキとスポンサー契約を結んでいるが
これまでの最年少プロデビュー記録を持つ元ドルトムントのヌリ・サヒンはムココのデビューが間近になってきたころのインタビューで、「僕の記録を抜くかもしれない選手がドルトムントから出てくることはうれしいね。ムココは次のステップを踏まなきゃいけない段階だったんだ。U-19は彼にとって簡単すぎる」と後継者の今後にエールを送っていた。
そのポテンシャルの巨大さはだれもが認めるところだが、だからこそ心配する声も聞こえてくる。天才児と絶賛された早熟選手はある時を境に成長が止まり、道に迷い、トップシーンから姿を消す事例が少なくない。かつてアメリカで14歳でプロデビューを果たし、神童とさえ評価されていたフレディ・アドゥは、一度もトップレベルでブレイクスルーを果たすことなく、名前は聞かれなくなってしまった。
ムココは育成年代からナイキとスポンサー契約を結んでいる。詳細はだれも口にしていないが、億円単位の契約ではないかという推測はそう外れてはいないだろう。お金が動き、メディアが騒ぐ。若い選手がそうした状況になると、頭の中はすぐに誤解でいっぱいとなり、自分を見失いがちだ。
その点でムココは現実と正しく向き合う術を身につけているようだ。