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野村克也から甲斐拓也への手紙「君はいい名前をしているな」 ホークスの歴史つなぐ超一流の名脇役
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/12/01 11:03
「ホークスの19番」、甲斐拓也は日本一を成し遂げたソフトバンクの名脇役だ
「『拓也』は少し『克也』に似ている」
その対談では2017年のDeNAとの日本シリーズが話題になり、甲斐が「良かったことより後悔することの方が、ずっと印象に残っています」と打ち明けている。本塁打を打たれた配球への後悔なのだが、野村氏はその反省する姿も気に入っている。「失敗と書いてせいちょう(成長)と読む」。野村語録でよく用いられる言葉を贈っている。祖父が孫を見るように、穏やかな顔で温かく包むようすが目に浮かぶではないか。
反省した2017年にV1。18年は広島相手に甲斐キャノンが炸裂し、MVP。19、20年と巨人に8連勝で4連覇。野村氏から甲斐への「手紙」には、こう綴られている。
「キャッチャーは『女房役』であるがゆえ、『功は人に譲れ』というポジションなのだ。あくまでも脇役。主役になってはいけない。手柄はすべて、ピッチャーに譲るんだ」
その上で「優勝チームに名捕手あり」「ソフトバンクに甲斐あり、なのだ。そこは誇っていい」と伝えている。
そしてこんな一文で結ばれている。
「しかし、君はいい名前をしているな。甲斐は『やり甲斐』『甲斐性』の甲斐。ついでに言えば、『拓也』は少し『克也』に似ている」
拓也から天国の克也へ。今年も勝ちました。いい脇役であったと思います……。