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【都市対抗野球】活動終了の三菱重工広島、「野球部」という配属先を卒業する“ある選手”
posted2020/12/01 18:40
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
いつもなら、「真夏の球宴」などと称される社会人・都市対抗野球だが、今年は東京オリンピック開催を見越して、異例の「晩秋開催」になったので、12月3日まで東京ドームで熱戦が続く。
今季のアマチュア野球最後の公式戦。社会人野球も今年は都市対抗で幕を下ろすので、この大会を区切りにして、社会人野球を卒業する選手たちも少なくない。
今大会17回目と出場になった三菱重工広島に、渕上大地という選手がいる。
熊本・球磨工業高校から愛知の日本福祉大学に進み、三菱重工広島に入社して今年で9年目。三塁、二塁を堅実に守り、大きな実績はなくても、真面目にコツコツ練習を重ね、チームの信頼を得てきた。
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高校時代の彼は、180cm75kg、スラリとしたシルエットの大型遊撃手だった。
熊本の藤崎台球場。別の選手を見に行った試合だったが、相手チームのショートを守る渕上のプレーに惹かれていった。
スピード感あふれるフィールディングと強肩……何より、1球1球に鋭く反応する集中力がすばらしかった。三塁側スタンドの近い位置から見ていると、まるですべての打球を自分がさばいてアウトにしてやる……ショート・渕上の目つきに、そんなとんがった気迫が見てとれたものだ。
バッティングは力感も技術も、まだまだ勉強だと思ったが、早めに試合に出られそうなチームで、実戦の中で勉強していけば……そう考えて、日本福祉大・成田経秋監督に伝えた。
成田監督とは、その5、6年前、当時、日本福祉大のエースをつとめていた浅尾拓也投手(現・中日投手コーチ)の取材をきっかけに、親しくさせてもらっていた。学生野球界で信頼できる指導者のお一人だった。