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「不採用のたびに悔しくて凹んだ」キム・イングが米国4大スポーツ“女性初のGM”になるまで
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2020/12/01 06:00
本拠地マーリンズ・パークに立つキム・イングGM
「不採用の結果を手にするたびに悔しくて凹んだけれど、一つずつ経験から学び、次に生かしてきた」
採用にならなかった理由をチームから説明されることはなかったが、女性であることも一因にはあったようだ。就任会見の際には、ある記者が「あなたを採用のテーブルに載せることで、多様性を示そうとしたチームもあったのではないですか。そう感じたことはありませんか」という鋭い質問が出た。
最初からイング氏を雇うつもりはなかったが、女性やアジア系の人も選考の俎上に載せることで、世間からの様々な批判や意見をかわす目的もあったのではないかという意味だ。白人男性社会とも言われる野球界で、そういったことがあっても不思議ではない。
「自分には分からないけれど、でも、自分の名前が挙がることで、自分の(GM職への)意志を示すこと、また同じような仕事を目指す女性に対してメッセージを送ることも大事だったと思う」とイング氏は振り返る。
しかし不採用の報せを受けるたびに「打ちのめされた」と言うように、何度も何度も悔しい想いをしてきたことは容易に想像がつく。
女性GM誕生に必要不可欠だった「両親の理解」
中国系の父親とタイ系中国の母親をもつイング氏は、インディアナ州に生まれ、父親の影響でスポーツ好きな活発な少女として育った。ニューヨークのクイーンズに引っ越し、父親からスティックボール、いわゆるストリート・ベースボールを教えてもらうとすぐに夢中になったという。道路標識が一塁、ゴミ箱が2塁、止まっている車が3塁、など自分たちで自由に設定してプレーしていた。
その影響もあり、高校ではソフトボールとテニスに夢中になった。進学先のシカゴ大学でもソフトボールをプレーし、内野手としてMVPも獲得している。
イング氏は記者会見で両親への感謝を口にしている。彼女自身が努力し、今回のポジションを手に入れたことはもちろんだが、両親の存在も忘れてはならない。