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「不採用のたびに悔しくて凹んだ」キム・イングが米国4大スポーツ“女性初のGM”になるまで
posted2020/12/01 06:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
11月13日、米国スポーツの歴史が動いた。
MLBのマイアミ・マーリンズがアジア系アメリカ人女性、キム・イング氏をチームの新たなGM(ゼネラルマネジャー)として迎え入れることを発表。MLBはもちろん、米国4大スポーツ初の女性GMが誕生した。
ニューヨーク、クイーンズの路上で、近所の友達と草野球ならぬ「ストリート・ベースボール(正式名称:スティックボール)」をしてから40年以上、白球とともに人生を過ごしてきたイング氏。大学卒業後にインターンとしてシカゴ・ホワイトソックスに入った後はずっと野球の世界で生きてきた。
GMのポジションは「ドリームジョブ」だったと話すが、数多くの苦労があった。
そのためニューヨーク・ヤンキース時代の盟友で、現在はマーリンズのCEO、デレク・ジーター氏から採用を伝えられた際には、「最初は信じられなかった」と話す。硬い表情をまったく崩さないイング氏にジーターが「キム、ちょっと笑ってもらえるかな」と突っ込みを入れるほどだったと言う。
それほど驚きのニュースだったのだろう。
3年連続ワールドシリーズ優勝を経験するも……
イング氏はシカゴ大学卒業後の1990年シカゴ・ホワイトソックスにインターンとして入り、翌年からは正社員として、6年間にわたって野球のオペレーション部門を含めいくつかの部門で働いている。
1998年、29歳でニューヨーク・ヤンキースのアシスタントGMに就任。3年連続でワールドシリーズで優勝し、チャンピオンシップリングを手にした。「ジョー・トーリ監督やキャッシュマンGMから多くのことを学び、今でも何かあるとすぐに相談できる間柄」と話す。
ヤンキースでの活躍が認められ、2002年にロサンゼルス・ドジャースのアシスタントGMに就任。2011年までの9年間、3度地区リーグでの優勝を経験している。
GMの座に挑戦したのは、今回が初めてではない。2005年にドジャース、その後、シアトル・マリナーズ、サンディエゴ・パドレス、ロサンゼルス・エンゼルス、サンフランシスコ・ジャイアンツなど、GMの空きが出るたびに、挑戦し続けた。しかし、どれも採用に至ることはなかった。