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シブコ級の笑顔と“OBの記憶がない”ほどの安定感 恩師が語る今季3勝ルーキー20歳古江彩佳の魅力
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2020/11/26 06:00
パーセーブ率はツアー1位と抜群の安定感で今季3勝を挙げるルーキー古江彩佳。恩師も驚く快進撃を続けている
角谷監督が見る勝因とは?
「やはりこれだけ勝てているのは、体の強さが挙げられると思います。高校時代も古江はケガをしたことがないんです。高校2年からナショナルチームに選ばれたあと、たくさんの海外遠征に行き、帰国したあとはプロツアーや日本女子アマチュア選手権など3~4週間も続けて試合に出たこともありました。それでも疲れた顔ひとつみせなかったですからね」
確かにプロになったばかりの新人選手は、アマチュアとは違って連戦が続く環境に慣れず、体力が続かないことから、結果を残すのはなかなか難しいと言われる。
「普通、女子選手は連戦が続くと手首、腰、足など痛いところが出てくるケースが多いのですが、古江は何も言ってこなかったんです。古江のプロ転向の会見の時も『体の強さはお母さんに感謝してくださいね』と言ったのですが、アスリートにすごく重要な要素ですよね。お母さんは『スイミングをさせていたので、それが良かったと思います』と謙遜して言うのですが、両親と共に家庭でゴルフに専念できる環境を作っていたのだと思います」
体が強く、ケガがなければ練習やトレーニングが続けられる。若手の中には、試合中に体調が悪くなったり、体の痛みから棄権するプレーヤーもいる。その点、古江は強い身体が勝負強さを生み出しているという。
抜群の安定感、まるで「安打製造機」
一方で豪快なスイングやガッツポーズなど、決して派手な姿を見せず、淡々と堅実なゴルフをする。自身も「OBを打った記憶がない」というほど、ボギーを打たないショットの精度はツアー屈指。安定感を物語るようにパーセーブ率は92.2764%でツアー1位の成績を誇っている(11月25日時点)。
「確かに古江は多少、疲れていてもブレないスイングをするのが強みです。スイングはお父さんの教えをきっちり守っていて、無理をしないシンプルなスイングが特徴です。それにプラスして、ナショナルチーム時代に指導を受けたガレス・ジョーンズコーチに“ゴルフ脳”を叩き込まれた。そのメカニズムも相まってプレーの引き出しがすごく増えたと思います」(角谷監督)
さらに高校時代は心・技・体のバランスが一番整っていた選手だったという。
「例えばある大会で団体戦を組むときでも、安心して任せられる。野球でいうアベレージバッター、安打製造機。確実に打ってくれる選手が古江なんです」
プレーの安定感はすでに高校時代から養われていた。普通は試合中にミスが続くと精神的につらくなり、プレーの浮き沈みがあるものだが、古江にはそうしたメンタル面でのブレもなかったという。
「ドンと落ち着いた気持ち、何があっても動じない。高校時代にはたくさん悔しいこともあったのですが、それならもっと練習しようという子でした。次は見返してやるぞと。絶対に私の番がくるという気持ちでやっていたと思います」