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23歳トゥクタミシェワが貫禄の優勝! コストルナヤ、トゥルソワの不調にプルシェンココーチはどう対応?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2020/11/25 17:03
強力な若手のライバルたちを退け、見事に優勝を飾ったトゥクタミシェワ
トゥクタミシェワの衣装には漢字の「愛」が
こうした不運な成り行きで、トゥトベリーゼコーチチームの女子選手は参加ゼロという予想外のロステレコム杯となった。若手たちを抑えてタイトルを射止めたのは、23歳のエリザベータ・トゥクタミシェワだった。
SP「スパルタカス」では、冒頭の3アクセルをきれいに降りたが、次の3フリップの着氷でステップアウト。最後の3ルッツに2トウループをつけて、74.70で2位に立った。
フリーでは、背中に漢字の「愛」がほどこされた黒い衣装で登場。
振付は元マリインスキーバレエのダンサーだったユーリ・スメカロフで、音楽は日本の和楽器を使用した「Chronicles of a Mischievous Bird」(いたずら好きな鳥の物語)というタイトルの、ロシアの作曲家の作品である。
冒頭で3アクセル+2トウループを成功させ、続いて挑んだ3アクセルはステップアウトしたが、残りはノーミスで滑り切ると、最後のポーズをとって妖艶な笑顔を見せた。
昔の師匠と愛弟子が、コーチとして競いあう
会場はスタンディングオベーションとなり、テレビの解説席で立ちあがって拍手をする2002年オリンピックチャンピオン、アレクセイ・ヤグディンの姿も映った。フリー148.69、総合で223.39で逆転優勝。彼女のコーチはプルシェンコを育てたアレクセイ・ミーシンだが、昔の師匠と愛弟子が、今度はコーチとして競いあうことになったのである。
「勝てるかどうかは、最後まで自信なかったです。とても高いレベルの戦いでした。声援をたくさんもらっていたので、プログラムを台無しにしたくなかった。音楽が盛り上がっていったし、人前で演技をできる貴重な機会でもありました。観客からエネルギーをもらい、それをお客さんに返すことができました」
会見で、通訳を通してそう語った。
2011年秋に14歳でシニアGPデビューをしたトゥクタミシェワにとって、2年ぶり、5度目のGPタイトルである。15、16歳でピークに達しては消えていった選手も多いロシア女子の中で、息長くトップレベルを保ってきた彼女は特別な存在だといえるだろう。