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「ハミルトンが勝てるレースではなかったのに…」 競争力が低いマシンで最多王座を決めた“特別な何か”
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/11/20 11:02
年間チャンピオンでもシューマッハの記録に並んだハミルトン。チーム代表のトト・ウォルフと表彰台で揃い踏みし声援に応えた
「こういうコンディションは歓迎。またやりたい」
ハミルトンの偉業を指して、「パワーのあるエンジンが搭載された速いマシンに乗っているから」と言う者がいる。それを否定はしない。メルセデスのパワーユニットは最もパワーがあり、それが搭載された車体は最も速くコーナーリングできる性能を持っている。しかし、それだけでは歴史に名を刻むような偉業は達成されなかっただろう。
この日、ハミルトンのチームメートで今シーズンのタイトルを最後まで争っていたボッタスも、次代のチャンピオン候補と期待されるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)もミスを犯し、ハミルトンとともに表彰台に上がることはできなかった。
「厳しい状況になればなるほど、集中力が研ぎ澄まされるんだ。だから、こういうコンディションは歓迎。またやってみたい」(ハミルトン)
史上最多に並ぶ7度目の王座を獲得したレースで、ハミルトンはマシンの性能やエンジンパワーだけに頼ることなく、自らの力で勝利を手繰り寄せるという記憶に残る名レースを演じた。