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「ハミルトンが勝てるレースではなかったのに…」 競争力が低いマシンで最多王座を決めた“特別な何か”
 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2020/11/20 11:02

「ハミルトンが勝てるレースではなかったのに…」 競争力が低いマシンで最多王座を決めた“特別な何か”<Number Web> photograph by Getty Images

年間チャンピオンでもシューマッハの記録に並んだハミルトン。チーム代表のトト・ウォルフと表彰台で揃い踏みし声援に応えた

“特別な何か”とはマシンを速く走らせることではない

 ベッテルが指摘した“特別な何か”とは、競争力がないマシンをコース上で速く走らせることではなく、コース上でもっとも速くなくてもピットストップ回数を減らし、最終的には最初にチェッカーフラッグを受けるという戦術を指している。

 日曜日のイスタンブールはレース前に雨が降り、全車フルウエットタイヤでスタート。しかし雨は上がって徐々に路面が乾き出し、全車が雨と晴れの中間となる浅い溝を持つインターミディエイトタイヤに履き替える展開となった。上位陣が軒並みペースを上げて激しくポジション争いを演じる中、ハミルトンはその後ろで冷静な走りに徹していた。

 ウォルフは言う。

「ライバルたちの多くがインターミディエイトタイヤに交換した直後、一気にペースを上げていた。そうすればタイヤを早期に傷めて、再びピットインをして交換しなければならなくなるのは明白だった。もちろんそれが間違いだったというつもりはない。速く走ることができるのなら我々もそうしていたかもしれない。しかし我々には今週末、そのペースがなかった。だからピットストップ回数を減らすために、コースにとどまるという選択を取らざるを得なかった」

自分が持っている経験から知恵を出し切る

 8周目にフルウエットからインターミディエイトにタイヤを交換したハミルトンは、8番手でコースに復帰。そのタイヤで残り50周を走り切った。1ストップ作戦に加え、この日ハミルトンが見せたオーバーテイクはわずか1回。予選6位の速さしかないマシンでも、コース上で抜かずとも、逆転優勝してしまう。それがまさしくハミルトンだけが持っている「特別な何か」だった。

「今日のレースの鍵になったのは、どのようにレースを組み立てるのかという洞察力だった。僕は自分が持っている経験から知恵を出し切ることができた」(ハミルトン)

【次ページ】 「こういうコンディションは歓迎。またやりたい」

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