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フェラーリで耐久レース参戦の可夢偉。
来季F1復帰の可能性はどれくらい?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byPanoramiC/AFLO
posted2013/04/08 10:30
3月下旬にフランス・ポールリカールサーキットで行われたWEC(世界耐久選手権)のテストに参加した小林可夢偉のマシン。
「日本のファンはひと安心しているかもしれないけど、一旦F1を離れてから復帰するのは簡単なことじゃない。だから、(F1復帰は)現実的にはかなり厳しいと思う」
3月11日にスクーデリア・フェラーリと契約した小林可夢偉。彼が今年レースを行うのはF1ではなく、世界耐久選手権(WEC)のGTEクラスである。乗り込むマシンはフェラーリ458GTEだ。
冒頭の言葉は、その発表が行われた直後に開幕したF1オーストラリアGPの舞台であるメルボルンで、フェルナンド・アロンソが語ったものである。
彼は私が日本人であることはわかっている。にもかかわらず、彼は敢えて現実を直視した発言をした。さらに、真剣な表情でこう付け加えた。
「F1のパドックに来るかって? ウチにはペドロ(・デ・ラ・ロサ)がテストドライバーとしているから、可夢偉がサーキットに来て僕たちと何か一緒に仕事することはないだろう」
フェラーリのF1チームの予定表に可夢偉の名前は無いが……。
これはアロンソが可夢偉を好意的に思っていないからというわけではない。
むしろ、アロンソと可夢偉は記者会見場などで出会えば、よく雑談を交わしていたほどの仲である。だからこそ、アロンソは日本人の私に本音で語ってくれたのかもしれない。
もちろんアロンソが例外的に偏った見方をしているわけでもない。
別のあるフェラーリ関係者も「現時点でフェラーリのF1チームのプログラムに、可夢偉の名前は入っていない」と語っているからだ。
フェラーリのF1チームの中で、可夢偉の存在は日本人が想像しているより大きくはない。それが、開幕戦で感じた現実である。
では、なぜ可夢偉はそれでもスクーデリア・フェラーリと契約したのか。
フェラーリと交渉を続けてきた可夢偉のマネージャーである宮川マリオは、「可夢偉の将来を考えたとき、この道を選ぶのがベストだった」と語る。