バレーボールPRESSBACK NUMBER

大山加奈が不妊治療の全てを明かした「キャリアと自分の人生、両方を手に入れられる社会になってほしい」 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph byAP/AFLO

posted2020/11/12 11:02

大山加奈が不妊治療の全てを明かした「キャリアと自分の人生、両方を手に入れられる社会になってほしい」<Number Web> photograph by AP/AFLO

学生時代からバレーボールに全てを懸けてきた大山加奈。自分の身体のことを改めて知ったのは現役を引退した後のことだった

妊娠公表にも迷いがあった

 待ち望んだ妊娠。

 夢のようで、嬉しくてたまらない一方、以前の自分と同じように、藁にもすがる思いで妊娠を望みながら叶わず、傷つく人がいるかもしれない。そう思うと、妊娠は公表すべきではないのではないかとも考えた。

 そもそもプライベートなことで、双子には安定期もない。家族や友人、近い仕事関係者などごくわずかな人にだけ伝えればいいのではないかとも考えた。しかし、それでも自分が発することで同じように傷つく誰かを救い、発信を通してほんの少しでも世の中を変えることができるなら、と妊娠中であること、それが不妊治療を経たものであることを公表した。

「まずは悩んでいる人、苦しんでいる人、頑張っている人がいることを知ってほしかったんです。子どもができるのが当たり前で、子どもがいる人は偉い、子どもがいないとダメ、そう思っている人がまだまだいるならば、絶対にそうじゃない、と言いたくて。子どもを授かって、子どもを産んで、育てることは素晴らしいことだけれど、そうじゃなくて悩んでいる人も、欲しくても授かれない人もたくさんいることをまずはわかってほしい。そもそも女性はキャリアと自分の人生を天秤にかけなきゃいけないこと自体がおかしいですよね。両方手に入れたかったら手に入れられる社会になってほしいし、子育てに専念しているお母さん、子どもがいない夫婦、結婚していない人、仕事に邁進する人、いろんな生き方があっていい。それぞれの人たち、大人、子ども、みんなに優しい世の中になってほしいです」

「男の人にも内診台に乗ってみてほしい」

 出産予定は来年3月。双子の育児がどれほど大変か、想像するだけでも不安は尽きない。だがようやく授かった大切な2つの命と共に、彼女は可能な限り仕事も続けて行くつもりだ。

「最初は(婦人科の)内診台に乗るだけでも恥ずかしくて、嫌だったんです。でも、最近は全然。慣れって強いですよね。不妊治療も、妊娠も出産も女ばかりと思ってしまうことばかりだから、何なら男の人も同じように内診台に乗ってみてほしい。それだけでも、少しは女の人の気持ちがわかると思うんですよ(笑)」

 女性、母、アスリートとして。夢を追うすべての人たちが、目指す未来を楽しみながら追いかけられるように、大山加奈はこれからも発信し続ける。産まれてくる子どもたちにも「スポーツはこんなに素晴らしく、楽しいものなんだよ」と伝えられる未来に向けて。

関連記事

BACK 1 2 3 4
#大山加奈
#不妊治療

バレーボールの前後の記事

ページトップ