酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
SB育成ドラフト3人がタイトル、打点王・中田翔&最多勝・涌井秀章の“史上初”とは 記録で2020パ総括
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/11/12 11:03
千賀滉大はパ最多勝を石川柊太らと分け合い、通算1000奪三振も達成した。周東佑京や甲斐拓也ら育成ドラフト勢が主力になっているのがホークスの強みだ
千賀、石川は直前まで規定投球回未達も
<投手成績>
・最多勝
千賀滉大(ソ)11勝 初
石川柊太(ソ)11勝 初
涌井秀章(楽)11勝 4回目
・最多セーブ 増田達至(西)33 初
・最多ホールドポイント モイネロ(ソ)40 初
・最高勝率 石川柊太(ソ).786 初
・最多奪三振
千賀滉大(ソ)149 2回目
山本由伸(オ)149 初
・最優秀防御率
千賀滉大(ソ)2.16 初
残り10試合前後となった第19週の段階では、オリックスの山本由伸が防御率(2.20)、奪三振(149)で2冠。最多勝は楽天の涌井が11勝。勝率も涌井秀章が.786で1位だった。
この時点でソフトバンクの千賀滉大は規定投球回数未達で防御率は2.46、奪三振は128、勝利数は9、同じく石川柊太も規定投球回数未達で9勝3敗だった。
しかしここから千賀は2試合連続で8回零封、2勝を挙げるとともに規定投球回数に到達して防御率1位、そして奪三振数は21を加え山本由伸ときっちり同じ149に並んだ。
石川は10月31日に先発して6回を投げて1勝、さらに11月9日には救援で白星を稼いで11勝を挙げた。
千賀、石川は楽天の涌井とともに揃って11勝で最多勝、千賀は山本と並ぶ最多奪三振に加え、防御率1位のタイトルを手にした。いわゆる「投手三冠」だ。石川は規定投球回数には未達だが今季の最高勝率の「10勝以上の投手」という規定を満たす。楽天の涌井が10月28日の登板で敗戦投手となったため、単独で最高勝率のタイトルが決まった。
“潜航艇”が2人も浮上したのは珍しい
規定打席や規定投球回数未達の選手が、シーズン終盤になってランキングに姿を現すことを「潜航艇が浮上する」というが、ソフトバンクの“2隻の潜航艇”のような見事な浮上は見たことがない。ソフトバンクの10月の快進撃は、とりもなおさずこの2投手の活躍によるところが大きかった。
またソフトバンクは、最優秀中継ぎ投手になったモイネロ、セーブ数でリーグ2位の森唯斗(32)、ホールドポイントリーグ3位(27)の高橋礼と、勝利の方程式が揺るがなかったことも見逃せない。