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18歳で“プロ契約より銀行員”を選んだバイエルン監督・フリックは、どうやってチームを再建したのか?
text by
ティエリー・マルシャン&アレクシス・メヌーゲThierry Marchand et Alexis Menuge
photograph bySébastien Boué/L’Équipe
posted2020/11/15 17:01
CL決勝のPSG戦、コマンがキミッヒのクロスに頭で合わせてゴールをあげた。これが決勝点となった
当初フリックは暫定監督という位置づけで、これはアンチェロッティ解任の際のウィリー・サニョルと同じであった。だが、彼は、単なる代役ではなかった。ドイツ代表でもヨアヒム・レーブの陰の参謀としてチームを支えた彼は、戦術はもちろん、その人間的な資質によりチームに一体感を生み出した。暫定監督は、新シーズンの到来とともに正式な監督になった。
自身も2度(1998年~2004年、2007年~2008年)にわたりバイエルンの監督を務めたオットマール・フィッツフェルドは、シーズン途中の監督交代成功の理由をこう説明している。
「フリックは選手のころからコレクティブな精神に溢れていた。チームを鼓舞し、変貌させることのできるモチベーターだった。指導者になってからも、チームが意気消沈した際に彼はロッカールームに新たな自信と勢いを与える。実際にクラブはあらゆる面で落ち着きを取り戻し、それはピッチの上でよく見て取れる。選手にどう語り掛ければいいか分かっているから、誰もが彼に信頼を寄せる。彼が監督になってからは、控え選手も誰ひとりとして彼の選択に不満を抱いてはいない」
「これほど素晴らしい雰囲気はかつてなかった
2013年と2020年のチームの違いを問われて、マヌエル・ノイアーはこう答えている。
「今のチームには厄介なやつがひとりもいない」と。
フリックのもと、《リベリー》の時代は完全に過去のものになったのだった。