三原は演技直前、“ご褒美”の瞬間を迎えた

　そしてこの西日本選手権を迎える。ピンク色のドレスに身を包んだ三原は演技直前、“ご褒美”の瞬間を迎えた。

三原舞依　ショートプログラム　(C)Nobuaki Tanaka

すべての写真を見る（3枚）

「名前がコールされる前に中野先生が手を握ってくださるのですが、その手がすごく温かいんです。私は手が冷たくなる方なので、その瞬間をいつも楽しみにして試合に来ていました。今日も温かくて『復活・三原舞依を見せられるように、出来るよ』と背中を押していただけました」

　演技前に、幸せな気持ちいっぱいでポーズを取る。すると冒頭で「3回転ルッツ＋3回転トウループ」を回転不足ながら降り、3回転フリップを成功させた。音楽に溶け込むようなステップでは加点がつき、スピンは3つとも最高のレベル4。滑り終えた瞬間にガッツポーズも出た。

「笑顔で滑るためには、キツい練習や厳しい事も必要」

「最後の最後まで、スピンが終わったポーズをとるまで気が抜けなくて、細かい所までしっかりやりたいと思っていたので、終わった瞬間にホッとしたのと、大きなミスがなくて良かったというガッツポーズでした」

　そう語る笑みには、夏頃には見えなかったトップ選手としての自信とプライドがにじんだ。

「今日滑っている時は楽しんで滑れましたが、練習のときは試行錯誤もあって、思い通りにいかず悔しい時とか、体力がなくて全然ダメだなと思う時もあります。試合で楽しんで笑顔で滑るためには、キツい練習や厳しい事も必要で、その先に楽しいことが待っているのがスポーツの良い所かなと思います。だから、まだ出来てない所を磨いていきたいです」

　語る言葉も、どん欲なアスリートといった様相だ。得点は64.50点で、坂本に次ぐ2位発進となった。予想以上の得点にも、どこか落ち着いた様子さえ見せた。

【次ページ】　坂本は好調なシーズンインを迎えていたが……