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坂本花織と三原舞依、理想の競争関係 復活したライバルに「負けたくない気持ちがまた芽生えてきた」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byNobuaki Tanaka
posted2020/11/09 11:01
SP首位の坂本(右)がFS全体2位の129.83点、合計200.23点で西日本選手権優勝を果たした。SP2位の三原はFS全体トップの130.37点、合計194.87点で2位に
坂本もまた、違う立場から三原の存在を意識していた
しかし刺激を受けているのは、三原のほうだけではない。坂本もまた、違う立場から三原の存在を意識していた。
フリーの演技を迎えた坂本。フリーは昨季から継続の『マトリックス』で得意とするパワフルなナンバーだ。演技前半のジャンプは、スピード感溢れるダイナミックな飛躍で、今季の好調ぶりをアピールした。ところが演技中盤から勢いがなくなると、後半のジャンプ3つでミスを連続。最後のループは1回転になり、悔しい内容になってしまった。
「前半はいつもどおり出来たけど、後半は崩れてしまって、こういう演技を公の場でしてしまったことが情けないです。前半は良かったのですが、ステップが終わった後に、色んな雑念が湧いてきてしまいました。考え無くてよいことまで考えて集中力が切れてしまったのかなと思います。あんまりこういう考えはしたことなかったのですが『ちょっとスピードを落として確実に跳べるように、すっ飛ばないようにしよう』と。今までなかった考えです。いつもは『スピードに乗って跳んでいこう』と思う方なのに、今日に限って……あかんなと思いました」
心を探るようにして答える
なぜ雑念が湧いたのかを聞かれても、すぐには理由が分からず、心を探るようにして答える。
「えーー分からないです。突然、そういうことを考え出してしまったら止まらなくなっちゃって。あまり良く分からないです。まったく怪我もしてないし、後半の疲れ具合も練習と同じくらいだったので余裕で行けるしんどさだったんですが……」
しかし、ある質問を受けた瞬間、苦笑いは消え、急に真面目な顔になった。得点はフリー129.83点で、総合200.23点。優勝は飾ったもののフリーは三原に首位を譲ったことについて聞かれると、心の奥にあった雑念がその形を表したのだ。