松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラトライアスロン秦由加子は「なぜ、あえて義足をなくしたのか」松岡修造が聞いた
posted2020/12/06 11:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Nanae Suzuki
1年延期された2020年東京パラリンピック(2021年8月24~9月5日)で自身2回目のパラリンピック出場を視野に入れる秦由加子選手は、課題であるバイクの競走力を向上させようと昨年、右足の義足を思い切ってなくすスタイルに変更した。
片足で自転車を漕ぐというのはどんな感覚なのか。うまくバランスは取れるのだろうか? そして他のパラアスリートたちと同じく新型コロナウィルスの影響を受けた秦選手は東京パラリンピック延期と自粛期間をどう受け止めたのだろう。
松岡修造さんの興味はインタビュー終盤になっても尽きることなく、秦選手の流暢な喋りに感心しながら彼女のラン用の義足を手にしたまま聞き入った。(全4回の3回目/#1、#2、#3へ)
「えっ、えっ?」松岡修造が驚いた “パラ世界4位”秦由加子「ホント、足なくて良かったわ~」の真意とは より続く
一旦止まって義足を外し、汗をジャーッと出して……
松岡 自転車(バイク)は片足で漕ぐスタイルに変えたんですよね。どうしてなんですか?
秦 去年の9月から片足に切り替えたんですけど、それまで約半年間は片足で漕ぐトレーニングをして、レースでは両足を使っていました。なぜ片足にしたかというと、トランジション(スイムからバイク、バイクからランへの種目の切り替え)で義足の着脱に時間がかかるのと、一番は“汗問題”でした。
松岡 汗問題? 具体的にはどういう問題でしょう?
秦 去年の8月、お台場で2020年東京パラリンピックのプレ大会があって、レース中にソケットの中が汗だくになってしまったんです。ソケットと太ももは本来、密着して義足が外れないようになっているのですが、プレ大会のときは一旦止まって義足を外し、ソケットの中の汗をジャーッと出して、また義足をつけてバイクに乗るというのを3回繰り返して、とんでもなく順位を下げてしまいました。そのとき「これは義足をなくさなければ勝てないな」と思ったんです。
松岡 義足をなくすって、勇気がいりそうですが……。
秦 海外では片足のほうが徐々に主流になってきているんですよ。女子では膝上切断で義足を使っているのは私以外にフランスの選手一人しかいませんし、男子選手は基本的に義足を使わない傾向にあります。それはやはりトランジションの問題と軽量化のためです。バイクは総重量が軽いほうが絶対的に有利ですから、どの選手もできるだけ軽くしたいんですね。義足1本なくなるだけで何キロも減って単純にスピードが上がります。