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【引退】中村憲剛が「タイトルを獲れない最大の原因は自分」と悩んだ日 悔しさこそ原動力だった
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/11/02 20:00
MVPを獲得した2016年の1枚。栄光はキャリア終盤に巡ってきたが、フットボーラー中村憲剛の土台には、何度も味わった悔しさがあったのだ
「37歳で初優勝する選手はそんなに多くない」
そして、その悔しさに秘めていた思いも語り始めてくれた。
「早い段階でタイトルを獲れていたら、もっと早い段階で引退を決断していたかもしれないです。タイトルを獲ることで、ある種の達成感や充実感に昇華されるので。タイトルを落とし続けたその十何年というのは、執念に近い形ですけど……実際、37歳で初めて優勝する選手もそんなに多くないと思います。
それだけ自分はこのクラブにタイトルを、という気持ちをずっと持ち続けてきました。悔しさを次の年のパワーに変える。そういう作業をずっと繰り返してきたので、それが今の自分のベースになっているのは間違いないと思います」
タイトルを逃し続けてきた悔しさというパワー。やはり、そこに中村憲剛というプレイヤーを突き動かした原動力もあったように思えてならない。
ただ37歳まで無冠という悔しさと向き合い、それでも走り続けた先には、タイトルという栄冠の頂を噛みしめる喜びが待っていた。そして、その経験値によって彼自身の景色もまた広がった。
「最近は勝ち続けることで見えるもの、勝者の力強さやタフさが、あらためてベースに上書きされている状態。どちらも経験できた18年だったと思います。だから今シーズンも最後にタイトルを獲って終わりたいです」
数ある試練と悔しさを乗り越えてきた40歳のバンディエラが下した決断。
残り2カ月。
長い旅の果てにたどり着いた終焉の舞台で、中村憲剛は何を残してくれるのだろうか。
(中村憲剛の鮮やかなプレーと表情の数々……『【秘蔵写真】ケンゴが味わった“あと1歩”の悔しさ、そして栄光…レアなJ2時代からのプロ生活18年を写真で振り返る(20枚超)』もぜひご覧ください)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。