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石川直宏が語る国立決勝で勝つための法則 04年、戸田光洋への伝言と原博実の「ドトールおごるから」
posted2020/11/02 17:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Toshiya Kondo
16年前、国立競技場のスタンドは青赤で溢れかえっていた。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝。ウォーミングアップを終えたFC東京の石川直宏が、ロッカールームへ向かう。そこで、浦和レッズ・永井雄一郎とすれ違った。2歳上のストライカーは、意外そうに顔を覗き込んできた。
「ナオ、どうしたの? 緊張した顔してるじゃん」
図星だった。普段はどんなビッグゲームでも平常運転する心臓が、今日はバクバク脈打っている。こんなことは、アテネ五輪のアジア最終予選以来だった。
石川だけじゃない。ロッカールームに入ると、明らかにチームメイトたちの表情も硬い。原博実監督は、それを察知したのだろう。選手をピッチに送り出す直前、いつもどおりのちょっと甲高い声で、こう“宣言”した。
「お前たち、勝ったら俺がドトールおごってやるからな」
一同、爆笑。さっきまで強張っていた選手たちの表情が、一気にほぐれた。石川の心臓も、ようやく静かなリズムを刻み始めた。
「あの一言で、この決勝を楽しもう。自分たちが今までやってきたこと、この試合でやるべきことをやろうってマインドになれたんです」
襲いかかる浦和、ジャーンが退場
ただし、相手は前年もナビスコカップ決勝を戦い、優勝カップを掲げた浦和だ。立ち上がりからエメルソンが、田中達也が、永井が、三都主アレサンドロが、長谷部誠が、次々とFC東京ゴールに襲い掛かってくる。早くも前半29分には、エメルソンの突破を阻もうとした守備の柱・ジャーンが2度目の警告を受け、退場になった。吉田寿光主審が赤いカードを掲げる姿を見て、石川の表情はまたちょっと強張った。
「タフな試合になると思っていた中で、早い時間帯で10人になってしまった。これでチーム、自分自身への負荷も大きくなる。勝ち負けへの不安というより、本当に最後まで走れるのかなっていう不安はありましたね」