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【引退】中村憲剛が「タイトルを獲れない最大の原因は自分」と悩んだ日 悔しさこそ原動力だった
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/11/02 20:00
MVPを獲得した2016年の1枚。栄光はキャリア終盤に巡ってきたが、フットボーラー中村憲剛の土台には、何度も味わった悔しさがあったのだ
「相当軽いです。羽が生えてます(笑)」
そして優勝のあの瞬間、彼はそれまで背負っていた重荷を全て昇華させた。
翌年の2018年からは自然体で臨むシーズンとなり、「自分は相当軽いです。羽が生えてます(笑)」と冗談を飛ばすほどで、それまで自分が背負っていた荷物は小林悠、谷口彰悟、そして大島僚太といった面々がうまく引き継いでくれた。この年、チームはリーグ連覇を達成。中村憲剛自身の、チームの中で丁度良い立ち位置を見つけた心地よさを謳歌しているようだった。
「タイトルを獲ったことで余計なプレッシャーからも解放された。いろんなことが見えるし、視野が変わった。自分もそうだし、チームの中もそう。去年は、自分たちで突き詰めることを突き詰めて、それと引き換えに優勝できた。追い込まれていて開き直ってやろうと切り替えたところもある。でも、力を入れて良いことはないのだなと。適度な緊張感と適度な不安感、あとは適度な高揚感。そのバランスが良いんだろうね」
翌年の2019年にはルヴァンカップを初制覇。3年連続でタイトルを獲得し、今年もすでにリーグタイトルが秒読み段階になっていた。
そんな中で40歳の誕生日翌日に行なった、驚きの引退発表だった。
悔しさと、どう向き合い続けてきたのか
最初にYouTubeでの記者会見を行い、その後には記者陣向けのオンライン会見が行われている。
質問できる時間は限られていたので、1つだけ聞いた。
それは、中村憲剛という選手が悔しさとどう向き合い続けてきたのか、である。
そのキャリアがずっと栄冠に彩られたわけではないからこそ、それをどう乗り越えてきたのか。凡庸な問いかけだと思ったが、それを尋ねようと思ったのだ。
こちらの質問に対して、彼は率直な言葉を述べてくれた。
「タイトルを獲り続けられなかったことが、今の自分がある大きな要因だと思ってます」