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坂本勇人「31歳で2000本安打」への道を拓いた“2009年の屈辱” 後輩にも教わり極めた右軸打法
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/11/08 18:00
11月8日、2000本目の安打を放ち、ヤクルトの山田哲人から花束を受け取った巨人・坂本勇人
右方向への打球は「あんまり考えてないですね」
だが、一人前になったからこそ、立ちはだかる相手の壁も大きくなっていた。
この当時の坂本の打撃は、とにかく引っ張るだけだった。
内角は天性のインコースのさばきで身体を回転させて引っ張る。真ん中ももちろんだが、外角の球でも強引にバットの先に引っ掛けるようにして巻き込んで打つ。そんなバッティングで結果を残してきた。
「右方向への打球を意識する必要性は感じている?」
この当時に取材したときに聞いたことがある。
「あんまり考えてないですね。ムリに右方向に打とうとしないで、自分の場合は外のボールでも手首を返して三遊間に打つ感覚で対処しています」
坂本の答えだった。
外角一辺倒の配球をされて、結果は散々
だが、その引き出しだけでは、いずれプロは許してくれなくなる。そこを徹底的に突いたのが、この年の日本シリーズの対戦相手だった日本ハムのバッテリーだったのである。
外角一辺倒の配球をされて、結果は散々だった。
21打数4安打の打率1割9分。
弱点を突かれてこのシリーズで封じ込まれただけではない。
「外角の厳しい球を右方向に強く打てないとこの世界では生き残っていけない」
ステップアップするためのテーマは明白になった。しかしそのテーマを追い求めていくことで、坂本は迷宮にハマった。
この頃の坂本は大きく足を上げて、そのまま投手方向に踏み出して体重移動を大きくしながら打つバッターだった。
普通なら回転軸がずれてボールを強く捉えづらいが、坂本には天性ともいえる左肘の抜き技がある。前に出ながらも腰の回転と連動して、インコースでも肘をうまく抜いて打てた。