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サイン盗み発覚でボロボロでもワールドシリーズに王手 アストロズ71歳老将が見せた手腕とは 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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posted2020/10/23 11:01

サイン盗み発覚でボロボロでもワールドシリーズに王手 アストロズ71歳老将が見せた手腕とは<Number Web> photograph by Getty Images

ア・リーグ優勝決定シリーズ第3戦でダグアウトに戻ってきた選手を労うベーカー監督(左)

大黒柱のバーランダーも離脱

 その後、2月のキャンプ開始後、ホセ・アルテューベやアレックス・ブレグマンら主力野手が公式に謝罪したものの、非難の声は簡単には収まらなかった。一部選手には匿名で脅迫まがいのメッセージが届くなど、過激さが増した時期もあった。

 戦力的にも、厳しい状況だった。昨季20勝を挙げたゲリット・コールがFAで退団したことに加え、開幕後には大黒柱のジャスティン・バーランダー、昨季38セーブのロベルト・オズナ、さらに昨季新人王の大砲ヨルダン・アルバレスが故障で離脱するなど、万全には程遠いチーム状態だった。

 8月中旬には8連勝を飾り、首位追撃かと思われたが、9月4日からは6連敗。地区優勝争いから脱落した。

「彼は、我々にプレーだけをさせてくれた」

 そんな中、チーム、そして選手の苦境を支えたのが、ベーカー監督だった。近年のデータ野球を尊重する一方、「オールドスクール」のスタイルを変えることなく、選手とのコミュニケーションを最優先させた。

 マイケル・ブラントリーは、しみじみと言った。

「彼は、我々にプレーだけをさせてくれた。過去のすばらしい話や、いかにしてここまでの人生を過ごしてきたかを話してくれた。彼は常に我々の疑問に対する答えを持っている」

 リーグ優勝決定シリーズでは、失点につながる失策を犯したアルテューベを、ベンチ最前列で出迎え、両手を広げて抱きしめた。ふさぎ込みかねない選手の気持ちをほぐし、励ますように諭し、勇気付けるのが、ベーカー流だった。

 公式戦で29勝31敗と勝率5割を下回りながらも、ポストシーズンではあらためて高い潜在能力を発揮した。だからといって、「みそぎ」が済んだわけでもなく、周囲の見方が変わるはずもない。

【次ページ】 「我々の姿を見たくないことも分かっている」

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