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サイン盗み発覚でボロボロでもワールドシリーズに王手 アストロズ71歳老将が見せた手腕とは
posted2020/10/23 11:01
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
激しい逆風の中、異例のシーズンを、老将は常に顔を上げ、真っすぐに歩いてきた。
ア・リーグ優勝決定シリーズ第7戦で力尽き、ワールドシリーズを目前にして敗れた翌々日の10月19日、アストロズを率いた71歳の大ベテラン、ダスティ・ベーカー監督は、自らツイッターを通してファンへメッセージを送った。
「このシーズンは、我々が望むような終わり方ではなかった。だが、このチームと我々が成し遂げたことを、これ以上に誇ることはできない。とてもホッとしているし、楽しい道のりだった」
世界一に輝いた2017年のワールドシリーズをはじめ、組織的なサイン盗みが発覚し、揺れに揺れたアストロズの激動の1年が終わった。
現役選手からも強烈な非難が相次いだ
昨オフ、一部米メディアが、当時アストロズに所属したマイク・ファイアーズ投手(現アスレチックス)の告発をもとに、常習化していたサイン盗みの実態を暴露したことで、騒動は一気に広まった。
11月中には、コミッショナーのロブ・マンフレッド氏が本格的な調査を開始。60人以上の聞き取り調査、7万6000通にも及ぶメールの確認などを進めた結果、アストロズには500万ドル(約5億5000万円)の罰金、AJ・ヒンチ監督、ジェフ・ルーノーGMへの1年間の活動停止、2020年、21年のドラフト1、2巡目の指名権剥奪などの処分を科した。
その後、アストロズは監督、GMの解任を発表。空席となった現場責任者として白羽の矢を立てられたのが、人格者として知られるベーカー監督だった。
もっとも、道のりは険しかった。騒動発覚後は、ファンからの罵声だけでなく、現役選手からも強烈な非難が相次いだ。17年のワールドシリーズで敗れたドジャースの本拠地でもあるロサンゼルスの市議会は、アストロズのタイトルを剥奪し、ドジャースに授与することを求める決議案を採択するなど、社会問題にまで発展した。