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東京五輪をあきらめて…「究極の文武両道」ラグビー福岡堅樹は医学部受験へ、どんな毎日を送っている?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2020/10/22 17:02
昨年のラグビーW杯で4トライをあげた福岡堅樹。現在はパナソニックでプレーを続けながら、医学部受験を目指している
「自分の人生を変えた選択」
その時点で最も後悔すると考えたのが、ラグビーを捨てるという選択だった。
「僕のなかでは大学受験のときの選択が一番大きかった。自分の人生を変えた選択だったのかなと思っていて、その時に考えたことが、“何を諦めるのが一番後悔しないか”というものでした」
後期試験では筑波大情報学群に合格し、ラグビー部に所属。大学時代は1年生の秋から試合に出場し、2年生の春には初めて日本代表にも選ばれた。卒業後はトップリーグでプレーし、W杯や五輪出場を目指した。ラグビー選手としてキャリアを積み重ねながらも、福岡の人生の設計図には、以前と変わらず「医師になる」という道がはっきりと描かれていた。
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だからこそ、ラグビーに真摯に取り組みながら、日々勉強も続けてきたのだ。
週の半分をラグビー、残り半分を受験勉強に
そして、今、自身の人生の中でも「最高の時間だった」という昨秋のW杯での感動や興奮を胸に、週の半分をラグビーに、残り半分を医学部受験のための勉強に費やしている。取材の日も右肩にかけていた少し重そうなバッグの中に参考書をしのばせていた。
「練習の日も昼休みや練習が終わったあとの時間も勉強にあてています。記憶力は以前に比べると落ちているので、暗記しなければいけないものは昔より時間がかかりますね。そういうときは自分なりに理屈をあてはめて覚えるようにしています」
来春合格すれば、10歳年下の同級生と机を並べる。
「そのあたりは“大丈夫かな”って心配になりますけど(笑)、基本的にやるべきことは変わらないので。そこでまた楽しさを見つけられるのかなと思っています」
ラグビーと勉強の両立。言葉では簡単な話だが、それを決意し、実行できる人間は決して多くはない。福岡は自らの人生プランを実直に疾走している。
「練習してきたこと(過程)が、いかに大舞台、本番に繋がっていくのか、その重要性をあらためて身に染みて感じているところです。しっかりと理解し、落とし込んで次に進むというところは、(ラグビーと勉強を両立する)今に生きているところかもしれませんね」
長年ラグビーを続けてきた集大成が凝縮された、W杯スコットランド戦前半終了間際のトライのように、医師を目指す過程も大切にする。
快足ウイングの夢はラグビーだけでは終わらない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。