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41歳ピルロ、47歳インザーギ、42歳ガットゥーゾ「06年W杯王者」23人中16人が指導者に でも44歳トッティは…
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/10/22 17:00
ピルロのユベントス監督就任はサッカー界に大きな衝撃を与えた
「君たちならできる」恩師リッピの教え
ただし、月見草に甘んじる元世界王者がいることも確かだ。アルベルト・ジラルディーノは4部アマリーグで土のグラウンドを前に選手の怪我を心配するし、ビンチェンツォ・ヤクインタに至っては父親とともに武器の不法大量所持を巡って刑事裁判にかけられ、ライセンス取得後一度もコーチ業をしたことがない。
スパイクを脱いだ今、彼らは一人ひとりがチームの浮沈を背負う。勝利の喜びは一瞬、クビの危険とは常に隣り合わせ。「指導者」と「選手」とは異なる仕事なのだと改めて考えさせられる。
それでも、彼らの師である名将マルチェロ・リッピは、教え子たちの将来を全く悲観していない。
「(ベルリンでの戴冠後)私は選手たち全員に言ったのだ。『将来、君たちそれぞれが何か大きなことを成し遂げようとするだろう。君たちならきっとできる。必ずできる。君たちは最高だ』と。
アンドレア(・ピルロ)は必ず成功する。レアル・マドリーで成功したジダンと同じように、ビッグクラブという組織の哲学を知り、どう物事が動くかすでに熟知しているからだ」
23人だけのチャットグループ
指導者大国イタリアが誇るナショナル・トレセン主催の今年度監督ライセンス講習は、コロナ禍の影響で遅れて9月下旬から始まった。新受講生リストの中には今年1月、南米アルゼンチンで現役引退したダニエレ・デロッシの名もある。「ボカ・ジュニオルスの監督になる」という壮大な夢を胸にコースヘ挑む彼がライセンスを取得した暁には、“ドイツ優勝組”指導者は17人にもなる。
一番早くスクデットを獲るのは誰か。イタリア代表監督になるのは。世界のてっぺんを分かち合った男たちはサッカー界の荒波の中で勝って笑い、負けて泣く。絆は太い。彼らは会話アプリで23人だけのチャットグループを持っている。
そうそう、あのアズーリの10番を忘れるところだった。今年になって急に代理人業を始めたフランチェスコ・トッティは、ライセンスを持っていない。
もちろん講習には通った。だが彼が座学にじっとしていられるはずがない。たった1カ月通っただけで中退した。彼はファンタジスタなのだ。
トッティは恩師リッピとともに、監督になった戦友たちを外野から温かく見守るのだろう。