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堂安律加入ビーレフェルトは“不屈のアンダードッグ” 負債35億円、破産寸前からブンデス1部
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/09/19 11:50
ブンデス1部の舞台に臨む堂安律とビーレフェルト。アンダードッグとしての意地を見せられるか
「単語を覚えるようにトレーニングを」
そんな指揮官に選手は全幅の信頼を寄せている。キャプテンのファビアン・クロスはノイハウスの手腕についてこんなふうに称賛していたことがある。
「本当に細かいところまでこだわりをみせるんだ。どの選手もそれぞれのポジションで何をしなければならないかをわかっている。サッカーは個人的な判断も関わってくるスポーツだから大げさに聞こえるかもしれないけど、僕らは合宿中にも長い時間ピッチに立って、同じパスや走りこむコースを合わせるトレーニングをやり続けた。単語を覚えるのと同じようにね」
老将の妥協を許さないこだわりが、新しいことにチャレンジしようとするクラブで花開いた。
身の丈経営の中で堂安がアクセントとなるか
そして、ブンデスリーガだ。昨季は確かにあらゆることがパーフェクトにハマった。だが今季は昨季以上の戦力で、昨季以上のかみ合わせを求めなければならない。そのことはノイハウスもよくわかっている。
「自分たちがこれまでやってきたスタイルをさらに成長させていきたいと思っているし、それをブンデスリーガで示したい。だが、それだけではだめだという現実に突き当たるというのもわかっている。世界最高峰に数えられるクラブとも対戦するのだ。自分たちの戦い方に依存するわけにはいかない」
過去の痛手から、ビーレフェルトは身の丈経営を大事にしている。
アラビSDは「補強に関してはリーグ残留のチャンスを高めるためにリスクをかけるつもりはない。借金をしてでも、どこどこのポジションに選手を補強することはしない。それは我々が過去から学んだ大事なことだ」と語っている。人件費でみたら1部リーグで最下位。今季の選手獲得でも、レンタル移籍の堂安をはじめ移籍金が全くかかっていない。
現戦力を総結集し、チームとしての力を最大限に引き出し、戦い方にバリエーションを持たせることが1部残留の可能性を引き寄せるためには必須条件になる。そして昨季から積み重ねてきた組織力に堂安ら新加入選手が確かなアクセントを加えられるかどうかがカギとなるはずだ。