“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
2試合連続ゴールは「湘南だから」 31歳DF大岩一貴が常に謙虚でいられる理由
posted2020/09/12 09:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
「もっと走らないといけないし、もっと球際だったり、切り替えだったり、突き詰めないと真の湘南の選手にはなれない」
DFながら2試合連続ゴールを挙げている湘南ベルマーレの大岩一貴は、リーグ戦8試合勝ちなしという苦しいチーム状況の中でゆっくりと口を開いた。
今季、ベガルタ仙台から加入した31歳のベテランCBは、自身の得点のことよりもDFとして失点を喫していることに責任を感じながらも、新天地で確かな手応えを感じていた。
「練習に行くと1時間前にはもう全員がいる。クラブハウス内のジムでは入念にストレッチをしたり、軽い筋トレをしていたり、練習に向けて準備をしているんです。若手が多いチームだけど、その若手がしっかりしている。齊藤未月は改めて(サッカーと向き合う)姿勢が素晴らしいなと思ったし、金子大毅はボールを奪えるし、テクニックもあって、何日か一緒に練習しただけで『こんなに凄い選手がいるんだ』ってびっくりしました。彼ら以外にもいい選手がたくさんいて可能性を大きく感じました。なので僕も気がついたら、若い選手に混じって同じようにギラギラした気持ちに切り替わっていた。目に映るものがすべて新鮮で、今もその感覚は持っています」
結果が出ていないが、チームからギラギラ感が失われていない。大岩はそこに湘南の可能性を見出している。「自分がこう言うのはおこがましいかもしれませんが……」と前置きをした後、湘南にやってきた理由を静かに話し始めた。
「初心に戻ってサッカーがしたい」
「実は(昨季の)夏にも複数のクラブから打診をいただいたのですが、その時はベガルタのキャプテンとして1年間きっちりやり切ろうと思って、残る決断をしました。でも、昨年のシーズンオフにクラブ(仙台)との面談で厳しい評価を伝えられた時、自分の出来を考えると納得できたんです。
仙台での4年目を終えて、ありがたいことに湘南を含めたいくつかのクラブからオファーを頂きました。年齢も30歳となって先を考えたときに、サッカー選手として環境を変えて、また一からチャレンジしたいと思ったんです。その中で若手が多くて、運動量や強度の高い湘南に飛び込んで、ハードなトレーニングを積んで、初心に戻ってサッカーがしたいと思った」
湘南に移籍した新シーズン、2月の開幕戦でスタメンフル出場を飾るも、第3節ではベンチ外。続く4、5節はベンチスタートと厳しいスタートとなったが、「大型移籍でもないし、拾ってもらったような存在なので、どんな状況になっても『スタメンで出られるようにチャレンジしよう』と純粋に思えた」。そう取り組んだからこそ、第6節の鹿島アントラーズ戦以降はレギュラーの座を取り返し、スタメンフル出場を続けている。