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2試合連続ゴールは「湘南だから」 31歳DF大岩一貴が常に謙虚でいられる理由
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/09/12 09:00
DFながら2試合連続ゴールと気を吐く大岩(中央)。なかなか勝利を掴めないチームの状況でも、前向きな言葉が目立った。
長期離脱によって消えた「焦り」
苦悩に喘いでいた'19年7月13日、J1第19節鹿島アントラーズ戦。前節からスタメン復帰した大岩は、この試合でCBとして出場。しかし、接触プレーで右膝に激痛が走った。
「試合中からこれまで感じたことがない痛みがあって、『これはもう無理だ』と思ったんです。試合も中央大の後輩であるシュミット・ダニエルの海外移籍前の最後の試合だったのに0-4という結果になってしまい、本当に落ち込みました。でも、この試合が1つの転機になりました」
試合後、病院で診断を受けると、右膝の内側靭帯損傷が判明。そしてずっと悩まされていたもう1つの膝の痛みについても打ち明けると、右膝蓋腱靭帯が炎症を起こしていたこともわかった。大岩はプロ入り後、最長となる1カ月半の離脱を強いられることになる。
「プロ1年目で1週間離脱した以外は、練習を一度も休んだことがなかったので(離脱期間は)新鮮な時間でした。それまでは張り詰めていたというか、ちょっと自分を追い込みすぎていたというか、『音を上げたら終わりだ』という思いが頭があった。でも、リハビリの時は逆に焦りがなくなって、きっちりと治るまでじっくりとやろうといい意味で開き直ることができました。膝蓋腱靭帯の炎症も適切な治療を行えたことで、徐々に痛みが消えていった。痛みが完全に消えたのは(その年の)12月のことでしたが、コンディションがよくなっている手応えを掴むことができた」
いまはもう余計なプライドはない
復帰後は3試合の出場、スタメン出場は2試合に留まり、'19年は終わってみればキャリアワーストとなる17試合出場に終わった。キャプテンとしての責務を果たせたとは言えず、クラブからの厳しい評価は当然だった。
そんな苦しい1年を経て、改めて自らの強みを見つめ直した大岩は、プロ9年目の再スタートの地に湘南に選んだ。だからこそ、どんな役回りでも彼の思いはブレないのだ。
「僕は湘南において、『1人の選手』に過ぎません。純粋にみんなとの競争を楽しめているし、試合に出たらチームの代表として身を挺してでも守ってチームに貢献しないといけない。今思うと、去年は余計なプライドが芽生えてしまったのかもしれません。でも、それをポッキリとへし折られた。だからこそ、今純粋にリスタートを切れているのだと思います」