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「大統領選を忘れるな!」プレーオフを戦い続けるレブロンらNBAプレーヤーの胸の内。
posted2020/09/08 18:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Douglas P. DeFelice/Getty Images
7月下旬にフロリダ州オーランドで再開されたNBAは熱戦が続き、全世界のファンを沸かせている。プレーオフも東西カンファレンスのセミファイナルが始まり、2019-20シーズンの優勝をかけた戦いもそろそろ佳境だ。
イースタン・カンファレンスでは最有力視覚されたミルウォーキー・バックスがマイアミ・ヒートにまさかの3連敗で追い込まれ、覇権争いは混沌。ウェスタンでも優勝候補のロサンゼルス・レイカーズ、クリッパーズがセミファイナルの最初の2戦で1勝1敗と星を分けるなど、波乱の要素も見えてきている。
こうしてゲームが行われている間、ディズニーワールドに作り出された通称“バブル(隔離空間)”では新型コロナウイルスの新規感染者は1人も出ていない。安全な環境で、NBAは一見すると順調に再開後のシーズンを進めているようにも思える。
しかし――。わずか2週間ほど前、8月下旬にはコロナとは関係のないところで、シーズンの継続が一時危ぶまれるほどの事態が持ち上がっていた。同26日、イースタン・カンファレンスの最高勝率チーム、バックスがオーランド・マジックと対戦するプレーオフ第1ラウンド第5戦のボイコットを発表。本拠地ウィスコンシン州で29歳の黒人男性が警官に撃たれた事件に対する抗議を、チーム全体で表明するための決断だった。
これを受け、対応に追われたNBAは同日に予定されていたプレーオフの3戦を延期することを決定。ここからリーグと選手会は緊張感にあふれた話し合いに突入し、シーズン継続は危機に瀕したのである。
プレーオフのボイコットなんて考えられない。
「僕たちはみんな傷ついている。同じことが何度も起こり、それでいて僕たちが平気でいられると思われていることにも飽き飽きだ。どんな大金を受け取っていようと、僕たちには感情がある。互いに話す機会があったのは良かったと思う」
選手会の代表を務めるクリス・ポール(オクラホマシティ・サンダー)の言葉を聞けば、全体の約8割が黒人というNBAの選手たちがこの問題をどれだけ重く捉えているかが伝わってくる。プレーオフ戦のボイコットなど通常ならば考えられないが、実際にそれが断行され、だからといって不戦敗にもならず、リーグ全体が足並みを揃えようとしたことこそがこの問題の大きさを表しているのだろう。