マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
打っても守っても“超”がつく一流。
東海大相模・山村崇嘉は坂本勇人だ。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/08/26 17:00
山村嘉崇は東海大相模のキャプテンでもある。いったいいくつの才能を持ち合わせているのだろうか。
山村が遊撃手の練習をしている?
その山村崇嘉が「遊撃手」の練習をしているというウワサを聞いたのは、この夏、全国の独自大会が始まった頃だったろうか。
「一塁手・山村崇嘉」しか見ていなかったからちょっと驚いたが、時々あるプロ向けのパフォーマンスかな、ぐらいにしか考えていなかった。
しかしその山村崇嘉の遊撃手が上手くて、ひっくり返った。
この夏の甲子園では、中京大中京・高橋宏斗(3年・183cm84kg・右投右打)の狙ったポイントに投げられる150キロにも驚いたし、智弁和歌山・小林樹斗(3年・182cm85kg・右投右打)の本物の本格派への大変身にもたまげたが、「ショート山村」のフィールディングはそれ以上の衝撃だった。
ランニングスローの様になり方と言ったら。
試合前のシートノック。
遠目に見て上手いショートが守ってるなと思ったが、秋に守っていた大塚瑠晏(2年・170cm65kg・右投左打)も器用に打球をさばくショートだったので、彼だとばかり思っていたら、それにしては背が高い。
打球に自分の体の動きを合わせていくタイミングの良さ。180cmクラスのサイズのわりに、身のこなしがキレキレでぎこちなさがない。ヒザと足首が柔らかい。
背番号6。メンバー表を確かめてみたら「山村崇嘉」。
そうだ、相模のショートには、山村がまわってたんだ……。
ノックのゴロが、山村の前に緩く飛んだ。
思いきりよく突っ込んだフットワークに自信が満ちる。グラブを伸ばして捕ったボールを、脇の下からスナップスローにして、一塁手の胸に投げたから驚いた。
遊撃手のランニングスローは高校生でもよくあるが、山村の身のこなしには「オリジナリティ」があった。
人がやらない身のこなしを、遠慮なく大胆に実行できる奔放さ。練習してきた動きをなぞることが優先する高校球児のプレーの中で、山村崇嘉遊撃手のプレーには、自分が動きたいように動いて、ちゃんとアウトに持ち込める「技術」の裏づけがあった。