マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
打っても守っても“超”がつく一流。
東海大相模・山村崇嘉は坂本勇人だ。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/08/26 17:00
山村嘉崇は東海大相模のキャプテンでもある。いったいいくつの才能を持ち合わせているのだろうか。
準備も反応もとんでもないショートだ。
二塁ゴロからの併殺プレーでも、スライディングしてくる一塁ランナーになんら惑わされることなく、自分のステップを踏んで、一塁手に正確かつ強烈な送球ができる。
ブンブン振ってくる大阪桐蔭打線の強烈な打球に備えて、三塁寄りの芝生に入って守り、1球1球、捕手の構えたコースが右打者の“内”なら右ヒザに、“外”なら左ヒザにちょっと重心を動かして、スイングに対する反応も正確だ。横着さを感じない丁寧な準備からして、きのう今日の遊撃手じゃない。
こりゃあ、最後の夏にとんでもない「ショートストップ」が現れたものだ。
試合終盤、山村崇嘉は三塁の守りにつく。
走者がいても三塁線を締めて守り、意識は三遊間に。打球スピードの速い大阪桐蔭打線に、少しでも長打を許さないための「立ち位置」と見た。
そこでまた、スーパープレーをやってのける。
“超”の付くスーパープレーをあっさりと。
走者二塁で、送りバントが三塁線に転がる。
マウンドを駆け降りた左腕・石田隼都がボールを拾うと、動いたままのサイドスローで、すぐそこにいる三塁手・山村崇嘉に送球したから、思わず「アアー!」と叫んでしまった。
近距離の相手に、動きながら投げられる送球ほど難しいものはない。球道が見にくいし、それ以上に怖い。
しかもショートバウンドになったその「見えない送球」を、山村崇嘉はあっさりグラブに収めてさらにタッチプレーに持ち込んだから、見ていたこっちはひっくり返った。
ボォーッと見てるとただのバント処理だが、選手目線で見れば、“超”の付くスーパープレーだ。普通なら触れもせずに後ろに逸らしていてもおかしくない。