酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
菅野智之とパのエース、ダルは?
MLBが気遣う“投手酷使指数”比較。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by(L)Kiichi Matsumoto/(R)Getty Images
posted2020/08/24 18:00
NPBとMLBでの今季登板数、野球文化の違いはある。ただスタミナ抜群の菅野智之(左)とダルビッシュの「PAP」が大きく違うことは興味深い。
セのエース格の今季「PAP」は?
このPAPでセ・パ両リーグの規定投球回数以上の投手をみてみると、以下のようになる(投球数順)。セは規定投球回数以下の広島・大瀬良と中日・梅津も加えた。
〇セ・リーグ
大野雄大(中)1117球
PAP 55466
西勇輝(神)1091球
PAP 47489
菅野智之(巨)1029球
PAP 83141
小川泰弘(ヤ)1027球
PAP 43626
平良拳太郎(De)920球
PAP 3888
大瀬良大地(広)892球
PAP 50241
梅津晃大(ヤ)738球
PAP 27182
前述したようにペナントレースは半分弱を消化している。この段階で菅野のPAPは8万超え。このペースでいけば、シーズン通算だと20万を超えうる懸念がある。4試合連続完投勝利の中日の大野、阪神の西、ヤクルトの小川も同じく10万台になる可能性がある。
なお広島の大瀬良はシーズン開幕から2試合連続完投という出足だったが、7月25日に登録を抹消され、8月8日に復活している。8月2日に10回完投を記録した中日の梅津はこの登板を最後に二軍落ちしている。
菅野は2018年、圧倒的な成績で2年連続の沢村賞を獲得しているが、この年レギュラーシーズンだけで3129球を投げ、PAPは「241781」となった。そして翌2019年は成績が降下した。技量抜群のエースと言えどもシーズン通しての投球過多は、翌年に影響を与えたことになる。
パは山本由伸のようなケースも。
〇パ・リーグ
有原航平(日)1074球
PAP 55035
則本昂大(楽)1066球
PAP 29387
石川歩(ロ)1023球
PAP 18080
涌井秀章(楽)1018球
PAP 79240
ニール(西)945球
PAP 243
山本由伸(オ)935球
PAP 8714
田嶋大樹(オ)921球
PAP 21651
パでも楽天の涌井が、このままいけばシーズン通算でPAPは20万近くになりそうだ。
完投数こそ1と少ないが、涌井の場合は1試合当たりの投球数が多い。ただし、涌井は8月19日の日本ハム戦では8回で降板している。その時点で12-1と大きく点差が開いていたから完投も可能だっただろうが、三木肇監督が配慮し、110球で降板させたと思われる。
日本ハムの有原もこのままいけばPAPは10万を超えそうだが、パでは彼ら以外の投手は危険水域まで達することはなさそうだ。
オリックスの山本は18日の西武戦で7回まで先発全員となる12奪三振の快投を見せた。その時点で1-1の同点だったが、チームはこの回限り、球数は103球で降板させた。
救援投手が打たれて負けたこともあり、批判の声も上がったが、チームが「投球過多」にならないように配慮していたのだろう。22歳になったばかりの山本の将来を考えれば評価できる。
なお、外国人投手のPAPは両リーグともに極めて少ない。契約時に「1試合当たりの球数は100球を大きく超えない」など、球数に関する契約をしているのではないか。