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39歳・和田毅の球速146キロの衝撃!
「遅い球を速く見せる」達人の進化。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/08/22 11:30
いわゆる「松坂世代」の39歳になる和田。同級生が故障などに苦しむ中、今季も先発として安定した投球を続ける。
和田は「速く見せる達人」。
もともとこんなスピード勝負をする投手でなかったためか、彼の自己最速がはっきりと記憶されていない。ただ、米大リーグのシカゴ・カブスで投げていた頃に92マイル(約148キロ)を投げていたのは覚えていたし、それが記述された当時の記事も見つけ出した。そして、それ以上の数字は見当たらなかった。
そもそも、和田は「遅いストレートを速く見せる」達人として扱われていた。
打者から見ると左腕が体に隠れており、リリースポイントが見えづらくなることでタイミングがとりづらくなる。
それに加えて、キレのあるボールを投げ込む。グラブを持つ右手の使い方が上手いのだ。体重移動をする際に右手をグッと引く。それでカベを作る。そこに思い切って体重をぶつけに行くから強い回転が生まれるというわけだ。
早稲田大学時代には東京六大学野球リーグで江川卓(法大)の持っていた記録を抜き、現在も歴代1位である476奪三振をマークした。その実績を引っ提げてプロ入りし、1年目の2003年からダイエーホークスの先発ローテに定着して14勝、189.0回、195奪三振という今思えばもの凄い成績を収めて新人王を獲得した。
33歳で148キロ、39歳で146キロ。
それでも若かった頃の和田のストレートは140キロが精いっぱいだった。
2005年、『和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか』(佐野真著・講談社現代新書) という著書が発売されたことが、なによりそれを証明している。
その後、メジャーリーグの厳しい環境(試合数や遠征など)で活躍することを意識して体を強く、大きくすることに重点を置いたトレーニングも行ったことで、今から10年ほど前から和田の直球はスピードが増していった。そして、前述したように140キロ台後半をマークするようになった。
和田がカブスで148キロをマークしたのが2014年だったから、当時33歳である。
それもすごい話だが、39歳を迎えてなお146キロを投げ込むというのは、さらに途轍もないことではないだろうか。