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39歳・和田毅の球速146キロの衝撃!
「遅い球を速く見せる」達人の進化。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/08/22 11:30
いわゆる「松坂世代」の39歳になる和田。同級生が故障などに苦しむ中、今季も先発として安定した投球を続ける。
工藤監督が実感を込めて驚いた。
誰よりも実感を込めて驚いたのが工藤公康監督だった。長く現役の第一線で活躍することにこだわり続け、それを体現した同じサウスポーだからこそ和田の凄みが分かる。
「スピードを落とさないというのは僕も現役の時に考えながらやってましたけど、それだけのトレーニングをしないと難しいことなのです。
やはり年齢を重ねると球速というのはどうしても落ちてしまう。だけど、今も速いボールを投げることが出来るのは、やっぱり彼の日頃からの練習や取り組みがボールに現れているからです。自分に厳しくやってきたからこそ、今日のようなピッチングが出来たと思います」
この日の西武戦、初回に2三振を奪った和田は2回以降もストレートを軸にして勝負を挑んでいった。3回までに早くも6奪三振をマークしながら、球数は39球に収めた。
7回に連打を浴びて2点目を失ったところで降板したが、6回までは毎回の9奪三振を積み上げた。2016年8月5日の日本ハム戦以来となる2桁奪三振には惜しくも届かなかったが、特筆すべきは9奪三振のすべての勝負球がストレートだったところだ。
「146キロはびっくりしました。まあ、でも今日の感じならば145キロくらいは出ているかなと思いましたけど」
まだこういう投球が出来るんだ。5回までは若々しいピッチングが出来たかな、と和田がはにかんだ。
現状維持ではなく、より上を。
「年相応のトレーニングとか、(練習量を)落とすとかという考えは僕にはない。年齢に逆らうわけじゃないけど、やっぱり僕の場合は追い込んでいかないといけないと思っているので。
維持しようとすると衰えるのは当たり前。何と言ったらいいか難しいけど、より上を目指しています。今の自分を日々越えていく。それでも現実はようやく維持か、もしかしたら落ちているかもしれない。でも、そういう気持ちでいるのは確かです」
試合後の囲み取材で、2桁奪三振を見たかったと声を掛けると「まあそこはね。そんなに多くを求めたら怪我しちゃうんで(笑)。でも、今日みたいなボールを投げられる日があれば、チャレンジしたいです」と笑顔で応えてくれた。