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最後まで笑顔を貫いたエース沖政宗。
磐城高が一丸で耐え忍んだ先の絆。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKyodo News

posted2020/08/19 20:00

最後まで笑顔を貫いたエース沖政宗。磐城高が一丸で耐え忍んだ先の絆。<Number Web> photograph by Kyodo News

試合終了直後、国士舘のエース中西健登(左から2番目)に笑顔で声をかけた。最後の最後まで笑顔を貫き通した磐城のエース・沖政宗。

「人生でこんなにも特別な、濃密な7分間は初めて」

 輝ける舞台で、選手たちが笑う。

 福島県の独自大会から、磐城のベンチで声が途絶えることはなかった。

 顔を強張らせながら打席に向かう選手に、誰かしらがすぐさま言葉を投げかけていた。

「笑顔、笑顔!」

 敗れた聖光学院との準々決勝でも、ゲームセットの瞬間まで彼らは“必笑”だった。

 そして甲子園では、がぜん笑顔が弾けた。

 交流試合では、特例によって試合前のノックを前監督の木村が担当することを許された。これもまた、磐城へのご褒美だった。

「人生でこんなにも特別な、濃密な7分間は初めてでした。野球の神様っているんだなと、この年になっても感極まりました」

 選手たちに連れてきてもらった甲子園。夢の実現に木村は涙をにじませながら、教え子たちの雄姿に想いを馳せる。沖と同じように、マスクをしていても口元は笑っているのだと、恩師の目がそう伝えているようだった。

「辛いこと、悲しいこと、苦しいことがあっても『耐え忍ぼう』と、事あるごとに生徒たちには言ってきました。今日は精一杯、持ち味を出してくれました。粘り強く、我慢強く、最後まで頑張ってくれました」

 2020年夏。

 25年ぶりの甲子園で、磐城は「Play Hard」で躍動した。

 全力疾走、全力プレー。そしてもうひとつ、高校野球の聖地に刻まれた「全力」がある。

 苦難を耐え忍び生まれた、笑顔だ。

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