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レアンドロ・ダミアンの“髭ポーズ”。
通訳が明かす秘話、敬愛する父へ。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/12 08:00
大分戦でゴールを決めた後、髭ポーズを見せた川崎FWレアンドロ・ダミアン。この日は愛息に向けたパフォーマンスも披露した。
貧しい環境でもサッカーを続けた。
幼少期、ダミアンは貧しいスラム街で育った。ブラジル国内では社会問題となっているが、貧富の格差もあり、そういった環境下では悪いことに手を染めてしまう子供が多いという。過酷な生活環境にダミアンもひとつ道を踏み外せば、全く違った人生を送っていたかもしれない。
ただ、彼は決してそっちの道に足を踏み入れることはなかった。
ダミアンの幼少期において何よりも大きかったのは父親の存在だ。もちろん、つらく、難しい時期もあっただろう。その大変さは想像に難くない。だが、貧しい環境にあっても、仕事をしながら男手ひとつで小さい3人の子供を育てあげてくれた父親は、彼の中で偉大だった。
そんな尊敬する父親に育てられたダミアンは、周りに影響されることなく、真摯にサッカーだけに打ち込んだ。時にはギャラをもらってストリートサッカーの助っ人を務めたりしながら、自身のプレーを磨いていった。そして、日々精進を続けたことで、最終的にプロへの道を手繰り寄せた。
「よくこれだけの人格者が育ったなと」
過去に複数回現地へと渡り、日本に帰ってきてからは様々なクラブでポルトガル語通訳を務めてきた川崎の“ガンジーさん”こと白沢敬典通訳は、ダミアンと彼の父親に対して敬意を払いつつ、こんなことを話してくれた。
「いわゆる本当に貧しいスラム街的なところで育っていて、ああいった厳しい環境の中で、よくこれだけの人格者が育ったなと。ダミアンは人間性を含めてすごくいい。裏表がなく非常に尊敬できる人間です。こういう人間を育てたお父さんはすごくしっかりしていらっしゃったんだろうなと思います。去年、お父さんが来日された時に『こんな素晴らしいお子さんを育てたあなたには敬服します。脱帽です。頭が下がります』と言わせてもらいました。それぐらいすごいことだと思います」
ブラジルに精通し、厳しい現状を知る人物だからこそ、ここまでの言葉が出るのだろう。
大変な日々だったかもしれない。それでも、父親、そして家族と歩んできた一日一日が、今のダミアンを作り上げている。
改めて、彼にとって父親とはどんな存在なのか。率直に質問をぶつけてみた。