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レアンドロ・ダミアンの“髭ポーズ”。
通訳が明かす秘話、敬愛する父へ。
posted2020/08/12 08:00
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
J.LEAGUE
ゴールが決まった瞬間、会場中のカメラがいっせいに1人の男を追う。
さながら舞台の上でスポットライトを当てられているかのように、試合を観戦するすべての人間の視線がその男に注がれる。
満員の観客がいようとも、無観客でサポーターがいなくても、そんな最高の瞬間を独り占めできるのは、ゴールを奪った男だけである。
8月8日、J1第9節川崎フロンターレvs.大分トリニータの前半24分。相手のミスからボールを奪ったFWレアンドロ・ダミアンは、しなやかなシュートフェイントから華麗にGKの脇を抜いてゴールを陥れた。
ゴール裏を横切り、カメラの前に走ったダミアンは、周りの選手を呼び、子供に人気のヒットソング『ベイビーシャーク』のダンスを披露。新型コロナウイルスの影響による自粛期間中、日々の支えになったという愛息に向かってパフォーマンスを届けた。
「いつも考えているのはチームが勝利すること。まずはチームが勝つことが一番重要です。その上で、今日はゴールという形でチームの力になれたことをすごく嬉しく思います。今日は息子の誕生日で特別な日でした。そんな日にゴールを決められて嬉しく思っています」
敬愛する父親への“髭ポーズ”。
家族思いで、紳士で、真面目。
かつてロンドン五輪で得点王を獲得し、ブラジル代表にも名を連ねた男は、その輝かしい経歴を振りかざすことなく、チームのために働いている。スタメンだろうが、途中出場だろうが関係ない。ゴールを奪えなかったとしても、チームが勝つことを最優先にしてピッチに立つ。勝利だけを目指して邁進する姿は、川崎にとって大きな存在となりつつある。
そんな男が、毎回スポットライトが当たる度に行うゴールセレブレーションがある。
立派な口髭を蓄えた敬愛する父親に向け、両手の人差し指と中指を鼻の近くで合わせて作る“髭ポーズ”だ。
これはダミアンの人生の中で、父親の存在がいかに大きいものかを示すパフォーマンスであることを知ってもらいたい。