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LINE振付指導で「正面はどこ?」。
フィギュアスケーターたちの模索。
posted2020/08/16 11:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Manabu Takahashi
新型コロナウィルスは、フィギュアスケート界にも大きな影響を及ぼしている。
世界中のほとんどのスケーターが氷上に上がることができない期間が続き、選手たちは本来のオフシーズンとは異なる時間を過ごしてきた。
先月下旬、全日本シニア強化合宿に参加した選手たちはリモートで取材に対応した。語られたのは、やはり練習が困難であった事実だった。
「滑ることができなかったのは、だいたい、1カ月半くらいです」
田中刑事は言う。
緊急事態宣言後、氷上練習ができなくなり、宣言解除ののち、練習が可能になった。
ただ、心境をこう明かす。
「正直、モチベーションを維持するのが難しいです」
「残念な気持ちを共有しました」
そこには昨シーズンから続く経緯がある。
本来であれば、3月、昨シーズンの集大成となるカナダでの世界選手権に出場するはずだった。
田中が大会の中止を聞いたのは現地入りした後のこと。すぐさま、帰国の途についた。結局、2泊4日となった。
「自分でもびっくりするくらい弾丸でした。ゆづ(羽生結弦)や、(宇野)昌磨、みんなと連絡をとりあって残念な気持ちを共有しました」
それで気持ちが落ち着くことはなかった。
「日本に帰ったときには、(精神面で)けっこう来ましたね」
調子はよかったと言う。なおさら、練習が再開されたあとも気持ちを引きずることになった。