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韓国2部で11戦11ゴールFW安柄俊。
憲剛さん、キタジさんの助言を胸に。 

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キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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photograph bySuwon FC

posted2020/07/24 09:00

韓国2部で11戦11ゴールFW安柄俊。憲剛さん、キタジさんの助言を胸に。<Number Web> photograph by Suwon FC

先日、古巣ロアッソ熊本へ豪雨に伴う義援金を贈与した安。いまも日本への感謝の気持ちを忘れない。

合致した風間さん、憲剛さんの助言。

「おおまかにいうと、ボールが自分のところにないときのポジショニングです。自分が何を考えて、動いているのかがハッキリしないわけです。僕は当時、本当に何にも考えてなかった。熊本でキタジさんと出会って、アドバイスをたくさんもらったのですが、風間さんも憲剛さんも言っていることの本質は同じで、それが合致したんです。川崎時代に『何も考えていない』って言われていたのはこういうことなんだと。それが今ではよくわかります」

 さらに安は、川崎時代に風間監督から言われた言葉を1つ教えてくれた。

「風間さんに練習中のミニゲームで『お前と(大久保)嘉人がシュートを何本打ったか数えてみろ』と言われたんです。僕は10~15分のゲームで1本もシュートを打てなかったのに、嘉人さんは5~6本打っていました。その時は心の中で舌打ちしていましたよ(笑)。ただ、そういうのって、今でも自分の頭の中に残っているんです。今はなぜ嘉人さんがあんなにシュートを打てていたのかが、すごくわかります。当時の自分が、いかに何も考えていなかったか……。それまでは親にもらった身体能力でサッカーをやっていたんだなと思いました」

人民のクリスティアーノ・ロナウド。

 Jリーグ時代の不遇を経て、'19年から韓国Kリーグの水原FCに移籍した安。祖父母の故郷でプレーするとはいえ、生粋の日本育ちの彼にとって韓国は慣れない“海外”に等しい。

 ただ、言葉が通じることもあり、チームに溶け込むのも早く、1年目から17試合で8ゴールを決めて結果を残した。そして2年目に才能が一気に開花した。

 現地では、かつて水原三星でプレーした元北朝鮮代表FW鄭大世(清水エスパルス)が、“人民のルーニー”と愛称をつけられたことがあったが、同じ北朝鮮代表歴がある安にも“人民の(クリスティアーノ・)ロナウド”とメディアが騒ぐ。

「韓国メディアってそういう愛称をつけるのが好きですよね。注目されるのはとてもありがたいことですよ。おもしろく受け止めています」

 周囲の意見を取り入れる柔軟さを身につけたことで、よりプレーの幅も広がったという。FWとしては多少の傲慢さも必要だと思うが、その精神は失っていないのだろうか。

「FWとしての傲慢さは、今でも持っていないといけないと思います。バランスが大事ですよね。周りを使うときは使うけど、他の選手とは違う部分を見せたいです。『え、そこで打つ?』って驚かれるくらいのゴールを決めたい。だから、バランスが崩れないくらいの傲慢さは必要だと思います。ただ、僕の傲慢さは、単純に人としての傲慢さですから(笑)。天狗の鼻はJリーグ時代の6年間でへし折られました。いや、徐々に削られていったっていうのが正しいですね(笑)」

【次ページ】 電話越しに笑っていた憲剛さん。

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