水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
岡崎慎司の決定力を水沼貴史が分析。
“的”の大きさ、吸収力の原点は……。
posted2020/07/23 11:30
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph by
Getty Images
嬉しいニュースが飛び込んできました。
岡崎慎司が所属するウエスカがリーガ2部で優勝、来季1部昇格を決めました。
岡崎にとって以前から目標にしていたというリーガの舞台。2部とはいえ、そのピッチに立つ喜びを力に変えてしっかりと結果を残せたシーズンとなりましたね。34歳となった今も変わらず成長を続ける姿は、同世代や後輩たちに与える影響はとても大きいでしょう。試合後にすでに来季への意気込みを語っていましたが、初のリーガ1部挑戦に早くも期待を抱いています。
なんと言ってもゴールで結果を残せたことが大きかったと思います。チーム得点王となる12ゴールはブンデスリーガ・マインツ時代(2014-15)以来となる2桁得点。どの得点シーンを見ても岡崎らしいゴールばかりでした。
岡崎は相手DFの前に入り込む動きがうまい。岡崎のように身長が大きくない選手が屈強なDFと対峙するならば、それは欠かせない要素。昇格を決めた第41節ヌマンシア戦のゴールでも、右サイドにボールが出た瞬間から駆け引きを始めて、シュートモーションに入る前には相手DFを置き去りに。グラウンダーのクロスは少しマイナスにずれましたが、体勢を崩しながらヒールで流し込みました。おしゃれだけど、泥臭い。いいゴールでしたよ。
また、前線からの守備でスイッチを入れることができるのも岡崎のストロングポイント。なんとなく追うのではなく、ボールをしっかりと奪いに行く意思を感じます。3トップの中央を任されたのは、動きながらボールを受けて捌く機動力だけでなく、その守備力を期待されたからでしょう。仕事をきっちりこなすからこそ、決定機でボールが回ってきたのだと思います。
出し手から見ると「的」が大きい。
なにより岡崎の良さは、どんなボールにも反応する嗅覚。体を投げ出しながらゴールに流し込む技術に長けているので、パスの出し手から見たときに「的」が大きく感じるんです。アーチェリーの的を想像してみてください。円の中心に行くほど高い得点になっているけど、その範囲は限られていますよね。
でも岡崎の場合、一番得点が高い“的の中心部分”が他のFWよりもふた回りぐらい大きいイメージ。だから、多少パスがずれても、岡崎の“的”にあたってくれてアシストがつく(笑)。足や頭、時には胸と、体のあらゆるところで反応できるから、出し手としても「ここに合わせなきゃ」というプレッシャーから少し解放されるんです。