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日本のプロスポーツ界に革命が!?
税制と向き合ったJリーグ特命ペア。
posted2020/07/17 11:40
text by
岸名章友(日本経済新聞社)Akitomo Kishina
photograph by
J.LEAGUE
新型コロナがスポーツに足止めを食らわせているさなかに、Jリーグではちょっとした一大事が進行していた。プロ野球の親会社に特例的に認められてきた税務上の扱いが、Jリーグクラブの親会社にも認められることになったのだ。
クラブの赤字を補填するための親会社からの貸付金は課税対象とはならないというもので、平たくいえば親会社やオーナーがカネをつぎ込みやすくなる。クラブが大物選手の獲得などに乗り出しやすくなり、Jリーグがより華やかになるかも、とささやかれている。
そもそもプロ野球球団に対する特例は、はるか昔の1954年に国税庁の通達で認められたもの。年次の損失の限度において、親会社からの補填や貸付金は課税対象でない「損金」として扱われるとされている。この特例のすごいところは、球団がウン十億円の赤字に陥っても親会社が税を気にせず埋められること。通例ならこの種の拠出には税金がかかる(損金不算入)。親からの仕送りのごときものを可能にする60年来のルールが、球団の豪勢な経営をアシストしてきたことは想像に難くない。
同じ恩恵にJリーグクラブも与れることになったわけだが、発端はコロナ禍まっただなかの4月に遡る。
たった2人のJリーグ特命班。
あの頃、Jリーグ幹部陣は危機感のただなかにあった。
クラブの資金繰りが悪化し、助けねばならぬ事態が考えられた。全クラブで計約1250億円近くある営業収入が、露と消えかねない恐怖。すぐにでも引き出せる資金を大量に準備する必要に迫られていた。
もう1つ、悩ましかったのがスポンサー料対策だ。
コロナで試合を開催できず広告宣伝価値も失われるとみなされれば、税法上は課税対象と解釈される余地が生まれる。「それなら返せ」「減額する」と要求されたら大ピンチ。Jリーグにとってスポンサー料は収入の半分近くを占める命綱だからだ。
資金繰り対策については、村井満チェアマンがすぐさま大手銀行などとのコミットメントライン(融資枠)契約へ動く。
そしてスポンサー料問題には特命班が結成され、大型連休を返上して国税庁と向き合うことになる。特命班といっても専務理事の木村正明と、趣味はトレイルランという若手職員との2人だけだったが。