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日本のプロスポーツ界に革命が!?
税制と向き合ったJリーグ特命ペア。
text by
岸名章友(日本経済新聞社)Akitomo Kishina
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/17 11:40
Jリーグ専務理事の木村正明氏。東大法学部卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。ファジアーノ岡山の社長を経て、2018年より現職。
「プロ野球のようにならないと一段上にはいけない」
親との密な関係が重要なのはJリーグとて同じ。
清水の舞台から飛び降りる覚悟で外国人選手を獲得し、赤字を抱え込んだ某クラブ社長が「税負担がかからなければ、親会社から補填を受けられるものを」とじだんだを踏んだこともある。
強化費が底を突いた「子」の窮地を、多大な税負担を負ってでも救ってきた親会社も多い。
木村はファジアーノ岡山の社長だった一昔前、札幌へ向かう機内で同僚社長が託すように語ったことを覚えている。
「プロ野球のようにならないと、Jリーグはもう一段上にはいけない。お前がリーグ本体にいくことになったら、これを解決するんだぞ」
国税庁とやり取りを交わすなかで、木村は「自分たちが思う以上に、Jリーグの存在やガバナンス(統治)の確かさが認められている手応えがあった」という。
親会社からたやすくカネを得られることはクラブを甘やかし、放蕩息子ならぬ放漫経営を生みかねない。ただしJリーグはクラブライセンス制度を整備し、曲がりなりにも健全経営がなされるよう律してきた。経営体としてのまともさを、総合的に評価してくれたのかもしれない。国税庁は理に基づいて動いてくれた、とも木村はいう。
理を重んずる税の番人は誠意でもって応じた。
「やり取りの過程では非常に理路整然と解釈をしてくださった」とは、木村の相方として奔走した若手職員の弁。
プロ野球球団を巡る特例は、戦後間もない時代に主たる興行だった野球を側面支援する意味合いで設けられたものだろう。ただ、60年余りを経てスポーツも娯楽も多様化した。あるルールが、プロ野球という1つの存在にだけ認められなければならない必然性についての「理」は乏しい。
木村たちの申し立てが無理筋なものではなかった以上、理を重んずる税の番人は誠意でもって応じてくれたということではないか。