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たくましさが光る愛媛FC・
川井監督のロジックとマジック。
posted2020/07/17 08:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
コロナ禍でストップしていたJリーグが再開した。ギュウギコュウの過密日程、降格なし、5人交代制という今季限定の条件下でキーワードになってくるのが「指揮官のマネジメント」である。
交代枠をうまく使い、ベテランも若手もチームの総力を使いながら、コンディションを整えて勝っていかなければならない。夏場の連戦となると自分たちよりもボールと相手を走らせるチームのほうが有利だ。ボール支配を高めつつ、試合をコントロールできるほうがいい。降格がないため、勝ち点3をアグレッシブに狙っていく戦いに比重が置かれるであろう。
J1より1週間前に再開したJ2に、過酷なリーグ戦を逞しく乗り越えていけそうなチームを発見した。
ズバリ、愛媛FCだ。39歳の青年指揮官、川井健太監督はとにかく大胆。再開初戦となったホームの徳島ヴォルティス戦は前半を3点ビハインドで折り返してハーフタイムに一気に3枚替えに踏み切った。流れを強引に引き寄せ、セットプレーでやられたらセットプレーでやり返す。終了間際に勝ち越し点を挙げて見事にうっちゃったのである。
再開2戦目のアウェー、レノファ山口戦では1-0とリードしながらも後半スタートから川井監督と同い年のベテラン山瀬功治を投入してシステムを4-3-3から3-4-2-1に変更。相手のウイングを抑え、右から左に回った長沼洋一が抜け出してJ初ゴールを決めるなど采配がズバズバと的中して完勝している。
2018年に帰ってきたクラブOBの川井監督。
クラブOBの川井監督は就任3年目。現役引退後、大学の女子サッカー部、愛媛FCレディース、愛媛FC U-18の指揮官を経て、低迷していたトップチームを救うべく'18年5月に就任。チームの再建に成功して残留安全圏へと引き上げた。
昨年は19位。下位が定位置のシーズンが続いているとはいえ、丁寧にビルドアップしてボールを持つスタイルを積み上げてきた。選手の適性を見て3バックと4バックを併用。多くの選手が複数のポジションをこなせるのも「総力戦」となればプラスに働くはずである。今季は降格がないため、もっと大胆なチャレンジを恐れずにやっていくに違いない。
川井監督のロジックとマジック。愛媛から“い~よかん”が漂う。