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日本のプロスポーツ界に革命が!?
税制と向き合ったJリーグ特命ペア。
text by
岸名章友(日本経済新聞社)Akitomo Kishina
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/17 11:40
Jリーグ専務理事の木村正明氏。東大法学部卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。ファジアーノ岡山の社長を経て、2018年より現職。
親会社による補填・貸付金を巡る扱いに革命が。
この特命ペアが国税庁からの見解を引き出す。
まず、仮に試合が途切れてもスポンサーの出した広告宣伝費は課税対象とならない「損金」扱いとなることを確認。これでスポンサー料はつなぎとめられる。「コロナ禍における相当の期間」とのただし書き付きではあったが、同じ適用がサッカー以外のすべてのスポーツ団体にも認められたから、コロナにあえぐ他の競技団体をも助けるファインプレーになったのだった。
この時点で十分にミッションコンプリートといえそう。ところが事のついでにというか、したたかにというべきか、特命ペアはもう1点、税に関する確認を申し入れた。
それが前述の親会社による補填・貸付金を巡る取り扱い。
文書照会の形で回答を受け、プロ野球の親会社と同等に扱われるとのお墨付きを得られたわけである。
10億円をドンとくれる親の存在がどれだけ有り難いか。
さりげなくもたらされたこの戦果は、Jリーグクラブへの投資、日本のサッカークラブの風景を変えていく可能性を秘めている。
木村によれば、最初から勝算があったわけではなかったという。生い立ちから地域密着を掲げたJリーグは、クラブは親会社やオーナーだけのものでなく地域のもの、という旗印のもとで発展してきた。親会社の存在感は前面に出てきにくかったし、経営トップは数年で入れ替わる雇われ社長も多く、各クラブでオーナー色はどちらかといえば薄かった。
それでも「親」をめぐる税のルールのことは頭の片隅にあったと木村は語る。
「リーマンショック後も東日本大震災の後も、J1クラブの平均収入は約30億円であまり変わっていない。助ける親の存在があったから。つべこべ言わずに10億円をドンとくれる親の存在がどれだけ有り難いか、あるクラブの役員からよく聞かされました」