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バレー高松卓矢が望む故郷への恩返し。
「裏切り」の声も覚悟した移籍とは。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byV.LEAGUE

posted2020/07/15 20:00

バレー高松卓矢が望む故郷への恩返し。「裏切り」の声も覚悟した移籍とは。<Number Web> photograph by V.LEAGUE

Vリーグ10年の節目に大分三好へ期限付き移籍した高松(中央)は、昨季までWD名古屋の主力として活躍した。

お祭り男、トークも達者。

 また、高松が存在感を放つのはコート内だけではない。Vリーグの記者会見やオールスターゲームなど、イベントには欠かせないお祭り男で、トークも達者。SNSもフルに活用する。その発信力はリーグ随一と言ってもいい。地元出身選手の大分三好への加入ということで注目されるであろう高松が、その熱いプレーや言葉で、大分のバレーボール熱に火をつけたり、バレー界における大分三好の注目度を上げることにもつながるかもしれない。

 高松は、バレーボールをしていた両親の影響で、小学校中学年の時にバレーを始めた。小学6年の時に一度、やめたが、中部中学2年の時に再びバレーを始めると、そこからのめり込んだ。別府鶴見丘高を経て、強豪の日本体育大に進み、卒業後、豊田合成に入社した。

 高松が中学生だった頃も、別府市には男子バレーボール部がある中学が3校しかなかったが、今では母校の男子バレー部もなくなってしまった。自身が故郷でプレーしている姿を見せることで、少しでも、バレーに興味を持ち、バレーを始める子どもが増えてくれればと切望する。

「大分の皆さんに僕のプレーを見てもらえるチャンスが増えるし、高校生や中学生のところに行ってバレーボールを教えたりする機会も、間違いなく愛知にいる時よりは増えると思う。僕が大分に行って、1人でも2人でも、バレーボールをやってくれる人が増えたら、それに越したことはないと思っています」

大分三好で探す新たな価値。

 新型コロナウイルスの感染拡大による春からの自粛期間は、アスリートとして「危機感」が募ったと言う。

「スポーツというのは、結局のところは娯楽。生きていく上で必ずしも必要なものではない。自分たちがバレーボールをできているのは、あくまでも平和な世の中があってこそです。バレーボーラーじゃない時の自分にどれほどの価値があるのかと言われたら、ハッキリ言ってないんですよ。いますぐ社業に専念してくださいと言われても、即戦力になれないですし。僕らのバレーボーラーとしての価値は、あくまでも平和な世の中で、自分たちがバレーボーラーとして問題なく活動できる環境があった上での価値なんですよね……」

 現役中からバレーボール以外の他のスキルを身につける必要性を感じたという。だが、それが自分にとって何なのか、どうするべきなのか、答えは見つかっていない。

 ただ、そうした中でも立ち止まらないのが高松らしい。大分での新たな挑戦が、探している答えに近づくための、ヒントを与えてくれるかもしれない。

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高松卓矢
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