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バレー高松卓矢が望む故郷への恩返し。
「裏切り」の声も覚悟した移籍とは。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byV.LEAGUE
posted2020/07/15 20:00
Vリーグ10年の節目に大分三好へ期限付き移籍した高松(中央)は、昨季までWD名古屋の主力として活躍した。
感じていた世代交代の重要性。
WD名古屋のチーム状況を踏まえての決断でもあった。WD名古屋にはアウトサイドが6人いた。長くレギュラーを張ってきた高松と白岩直也がベテランの域に入り、昨季は山田脩造や新人の高梨健太が出場する試合も多かったが、まだレギュラーを勝ち取ったとは言えず、世代交代は進んでいない。
「僕もベテランと言える年齢になって、もうチームの若返りをしないといけない時期。イゴール(・オムルチェン)もいなくなって、アンディッシュ(・クリスティアンソン)監督もいなくなったのに、いつまでもロートルがいたらおかしな話でしょ(笑)。
昔は、『レギュラーは、自分で(ライバルを)引きずりおろして奪い取るもんだ』みたいなことを僕も言っていたけど、でも、いるから、使われるのかもしれない。それだったら僕がパッといなくなって、そこに入る若手の子たちが頑張ってくれれば、チームの若返りという意味でもいいのかなと。僕にとっても10年の節目の年だし、新しいことにチャレンジするのもいいんじゃないかなと思いました」
高松も驚いたファンの好意的な反応。
チームの顔とも言える選手の期限付き移籍の申し出を、WD名古屋を運営するTG SPORTSの横井俊広社長は、「なんで君が? ファンの方たちや、私たちを取り巻く人たちに説明できないよ」と引き止めた。
それでも高松は、自分の思いを伝え、「ウルフドッグスはプロチームを目指しているんですから、こういうことにトライしていくのもありなんじゃないですか」と説得した。
「横井社長は、僕がそういうふうに言い出したらもう動かないというのを知っているんじゃないですか(苦笑)。それで、(親会社の)豊田合成のほうにも掛け合ってくださいました」
その後、大分三好との契約が成立した。
「裏切り者」と言われることも覚悟していたのに、期限付き移籍の発表後は好意的な意見が多く聞こえてきたことに、高松は驚いた。
「ツイッターやインスタを見ていると、『高松さんがなんか新しい取り組みを始めた』とか『Vリーグを盛り上げるために頑張ってる』みたいな感じのことを、たくさんの人が言ってくれて。もちろんそういう気持ちはあるけど、なんか、みんな僕が思っていたよりいいふうに捉えてくれているというか、上方修正してくれているなという感じです」
高松は苦笑するが、バレーファンがそう期待するのも頷ける。